株価の年間上昇率(前年末との比較)は56.7%と、高度経済成長期の1972年(91.9%)以来、41年ぶりの高い水準に達し、バブル景気が始まった86年の42.6%をも上回った。終値で1万6200円台を回復するのは07年11月以来のことだ。
しかし、この株高を尻目に、30日の終値が4月24日の年初来高値498円を30.9%下回る344円と低迷したのが、家電量販店最大手のヤマダ電機だ。急成長していた06年1月10日につけた最高値、1559円の約5分の1にまで下落した。
ヤマダ電機の成長が曲がり角を迎えたことを、株価は示している。
13年4~9月連結決算は営業損益段階で23億円の赤字(前年同期は213億円の黒字)に転落し、02年4月に連結決算に移行して以来、初の営業赤字となった。
ベスト電器を連結子会社にしたことで、売上高は8975億円と11.4%増えた。だが、インターネット通販との価格競争で採算が悪化し、売上高粗利益率は22.4%。前年同期(25.2%)と比較して2.8ポイント低下したが、粗利益率の落ち込みが営業赤字の原因だ。
14年3月期の連結業績見通しも下方修正した。売上高は1兆9410億円から1兆8890億円へ、営業利益は上期の赤字が響き、274億円へと大幅に減額する。当初、通期で営業増益(13年3月期の営業利益は339億円)を見込んでいたが、この結果、3年連続で減益となる。
●高くついた「安心価格保証」
13年3月期に2年連続で大幅な減収減益となったヤマダ電機の創業者、山田昇氏は同年6月に会長から社長に復帰、取締役を全員降格させるショック療法で業績のテコ入れを図った。
まず山田氏はネット通販対策に力を入れた。近年、家電量販店で現物を見てネット通販で購入するスタイルが一般消費者の間に広がっている。量販店のショーウインドウ化といわれるものだ。
ネット通販対策として打ち出したのが、ヤマダが最も得意とする「安心価格保証」だ。ヤマダはこれまで、他店の店頭表示価格より安く販売することで競合他社を押しのけてきた。従来は比較の対象を家電量販業界の店舗価格に限定してきたが、昨年5月からこれに通販サイトの商品の一部も加えた。価格比較サイト「価格.com」にデータ提供を始め、店長に価格設定の裁量権を与えた。
しかし、これが採算度外視の値下げを招き、単価下落→採算悪化につながった。
そこで急遽、方針を転換。昨年9月からは価格で対抗する対象からネット専業の一部の商品を除外した。「授業料は何百億円もかかった」と山田氏は語るが、粗利益率が2.8ポイント低下したということは、売上高に換算すると251億円をロスした計算になる。
ヤマダは業績回復への施策として、昨年12月11日、家電に次ぐ第2の事業である住宅関連事業の強化策を打ち出した。住宅事業拡大に向け、全国の不動産会社と連携するという。街の不動産業者を組織化して住宅建設やリフォームを考えている顧客を紹介してもらい、成約すれば紹介料を払う仕組みだ。当面、2000社と組むことを目指す。