あれほどみんなに好かれていたのに、今ではすっかり悪者扱い–。
「糖質」ほど、短期間で世の中の評価が変わったものも珍しいのではないか。糖質こそが肥満の原因で、生活習慣病を招く元凶だという論調が高まっている。
書店へ行けば『主食をやめると健康になる』(江部康二著、ダイヤモンド社)、『炭水化物が人類を滅ぼす』(夏井睦著、光文社)など、糖質の存在を全否定するようなタイトルが並び、スーパーでは「糖質ゼロ」と書かれたビールやコーヒーは当たり前になった。よく見ると、ケチャップや、とんかつソース、ハム、ベーコン、レトルトカレーに至るまで「糖質オフ」のラベルが貼られている。“糖質制限ビジネス”の拡大は、とどまるところを知らない。
大手コンビニエンスストアチェーンでは、2013年11月にローソンが「ブランの紅茶シフォンケーキ」を発売した。わずか162kcalで、糖質は14.9gに抑えられている。12年に発売した「ブランのロールケーキ」は、カロリーが142kcalで従来品の2/3、糖質は5.9gで従来品の半分だ。ブランとは、日本語にすると「ふすま」。小麦を製粉する時に出る外皮のことだ。小麦粉のような粉モノでありながら、糖質が少なく、食物繊維が豊富だ。糖質制限ファンにとっては、もはや定番食材といってもいいだろう。
ローソン広報担当者によると、ブランパンシリーズは12年6月に販売を開始したものの、当初は伸び悩んでいたという。しかし、この1年で大幅に認知度が上がり、シリーズ累計2100万個を超えた。もともとは、プレーンの食事パンのみだったが、徐々にスイーツに領域を拡大した。
「ダイエットや糖尿病でパンを控えていた方が、リピーターになってくださっています。甘い菓子パンも食べたいというご要望が多く、チョコパンやメロンパンを発売したところ、とても好評でした。ケーキの発売も、やはりお客様からのリクエストです」(ローソン・広報担当者)
●意外に広い購入層
購入者層は、意外に幅広い。ダイエット中の女性が中心と思いきや、ふたを開けてみると30~50代の男性も多く、メタボを気にしている様子がうかがえる。加えて、妊娠中の女性にも好評だ。
「妊娠糖尿病を心配して糖質を控えている方です。ネット上には、糖質制限のパンなどを扱う専門店がありますが、家族の中で自分だけが糖質制限をするには量が多すぎて、価格も高いようです。また、『今食べたい』という時に、コンビニはやはり便利なようです」(同)
商品開発は、糖質制限界では有名な山田悟医師のアドバイスを得ている。
「低カロリー・低糖質だけなら自社の人員でもできないことはないのですが、ちゃんと美味しくないと、お客様に喜ばれません」(同)
質だけじゃなく、味もこだわっている。現在は月1回のペースで新商品を入れ替えており、今後もパン、デザート、サンドイッチの新商品が登場する予定だという。
糖質制限ブームは、外食産業にも広がりつつある。