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アベノミクス、なぜ若者の貧困化を加速?景気回復が格差拡大・非正規雇用を増長

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「Thinkstock」より
 2013年、アベノミクスによって日経平均株価や有効求人倍率などの経済指標は改善した。日本経済団体連合会(経団連)の調査によると、東証一部上場企業76社の冬のボーナスも前年比5.8%増と、バブル期以来の増加となった。

 さらに、政府は4月の消費税増税による景気回復の腰折れを防ぐため、5兆円規模の経済対策を実施する。そろそろ景気回復を実感できる時期に差しかかっている。

 しかし、残念ながら、アベノミクスの恩恵は若者(特に非正規労働者)には回ってこないかもしれない。そう悲観的にならざるを得なくなるのが『増補新版「格差」の戦後史』(橋本健二著/河出ブックス)だ。本書は、データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにしてきた早稲田大学人間科学学術院教授(社会学)が、若者の貧困、格差の始まりがバブル期だったということを明らかにする。

●若者の経済格差は、バブル期に始まった

 1980年代のバブル期は、70年代前半までの高度成長が終わり、労働需要が減少し失業者が増加。円高を背景に、東南アジアなどから安い製品が大量に流入し、競合する国内の中小企業の経営環境は厳しくなった。急激な円高の進行に対応するため、企業の生産拠点の海外移転、下請け企業に対する徹底した単価切り下げも行われ、中小企業労働者の賃金水準は抑制、大企業と中小企業の賃金格差は拡大するようになった。さらに、80年代に「雇うなら非正規雇用」というスタイルが始まり、非正規雇用が増大したのだ。

「一般労働者の求人倍率がわずかな回復にとどまったのに対して、パートの求人倍率は急上昇し、80年には前年比1.43倍(一般労働者0.75倍)、85年は同1.53倍(同0.64倍)、89年には同3.75倍に達する(同1.04倍)に達する。コスト削減が至上命題になっていたことから、企業は労働力を非正規雇用に頼ったのである。その結果、85年から90年の間に正規労働者が145万人の増加にとどまったのに対して、非正規雇用者は226万人増えて、役員を除く雇用者の20%を初めて突破した」(同書)

 当時、非正規雇用者は、女性を中心に増加。92年の段階で女性748.0万人、男性229.1万人、合計977.1万人だった(総務省統計局「就業構造基本調査」より)。97年には、それまで先送りされてきた不良債権問題が一気に噴出し、企業の大型倒産、経営破たんが相次ぎ、目の前の収益の改善を最優先とする企業側は大企業、中小企業を問わず、コスト削減で労働力の非正規化を進め、非正規雇用者は男性266.2万人、女性847.0万人、合計1113.2万人と1000万人を超えるまでに増加した。

 02年初めから07年10月までの69カ月の景気回復を記録した、「いざなぎ景気」を超える「いざなぎ越え景気」の期間中の02年でも、男性380.8万人、女性997.6万人、合計1378.4万人と非正規化の流れが加速する。男性非正規労働者も増加しており、それは世帯収入の格差拡大に直結する。

 貧困化も進み、05年の非正規雇用者の貧困率は10年前の95年調査と比べても22.4%から29.2%と増加(6.8ポイント増)。労働者階級(従業員規模1~29人)の8ポイント増(14.3%→22.3%)に次ぐ高い伸びを示しているほどだ。なお、貧困率にいう“貧困”とは「所得が国民の平均値に満たない。目安として約137万円以下」のことを指す。「いざなぎ越え景気」は当時から「実感なき景気回復」と揶揄されたが、国民の大多数の財布が冷え切ったままで大企業だけが潤う景気回復だったことがわかる。

 08年のリーマンショック、11年の東日本大震災を経た12年には、非正規雇用者は男性526.5万人、女性1186.9万人、合計1713.4万人となり、92年の1.7倍になった。