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NHKハイジャックもくろむ財界の大物に局関係者が恐々?新会長「従軍慰安婦発言」の背景

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NHK放送センター本部
「Wikipedia」より/Rs1421)
 NHK新会長となった籾井勝人氏が1月25日の就任会見で、「従軍慰安婦は戦争をしているどこの国にもあった」などと述べ、補償を求める韓国を批判したが、これについて与党の自民党からも批判が出ている。個人が歴史観をどう持とうと勝手だが、放送法では、NHKも含めてテレビ局に「政治的な公平性」を求めている。NHK会長は政治的な発言を慎むべきであり、籾井氏の発言は失言といえるだろう。本稿は、慰安婦問題について論考するものではないが、この籾井氏がどのような人物で、背後には誰がいるのかという点について解説していく。

 就任会見のやりとりを見ている限り、この籾井氏はかなり強気で傲慢な人物に見える。三井物産副社長や日本ユニシス社長などを経てNHK会長に就いた。メディアの世界は初体験であり、財界的にもまったくの無名、しかも経営手腕も未知数であるのに、就任早々からこれほどまでに傲慢でいられるのはなぜか。それは、バックにJR東海の葛西敬之会長がいるからである。NHK会長職もこの葛西氏の強い推しがあったことで得られた役職であり、率直に言えば、籾井氏は葛西氏の「傀儡」なのだ。少し長くなるが、その構図を説明する。

 日本経団連は安倍政権との太いパイプもなく、政治的にはほとんど影響力を持たないのが現状である。そうした中で、財界で安倍政権に最も大きな影響力を持つのが葛西氏であり、「陰の財界総理」といわれている。葛西氏は安倍政権の最大の財界ブレーンである。

 葛西氏は、「四季の会」という財界人や学者が集まる会合を主宰しているが、その会合は、第一次政権で首相になる前から安倍氏を応援してきた。主要メンバーには、古森重隆富士フイルムホールディングス会長や中西輝政京都大名誉教授らがいる。メンバーの多くが思想的にはいわゆる「タカ派」と呼ばれる人たちで、靖国参拝礼賛、太平洋戦争肯定論者でもある。

 葛西氏はまず、メディアへの影響力を持ち、愛国教育を日本に普及させたいと考えている。このため、NHKへの影響力を強めようと、民主党政権時代に腹心の松本正之元JR東海社長をNHK会長に送り込んだ。昨今の財界も人材難であり、かつグローバル競争にさらされている企業は経営トップが超多忙な日々を送り、公職を引き受ける余裕がないが、JR東海は、東京-新大阪間の新幹線を収益源とする独占企業であり、日本で最もゆとりがある企業だ。独占企業の「ゆとり」を背景に葛西氏はNHK支配を画策して松本氏を送り込んだ。

●経営委員会のメンバーを入れ替え

 ところが、葛西氏のもくろみに反して、この松本氏は意外にも「常識人」であり、「葛西氏が、反中国や反韓国、戦争を美化する右翼的な番組制作をNHKに求めたが、松本氏はすべて拒否。かつての腹心の部下ではあっても、公共放送トップとして、やってはいけないことの分別がついていた」(財界関係者)。松本氏はJR東海社長時代から、暴走してあちこちで摩擦を起こす葛西氏の尻拭いをしてきたが、同時に能力も高く、部下からの人望も厚かった。要は、まともな経営者なのである。

 この「まともさ」が葛西氏の逆鱗に触れた。腹心に裏切られたのだから、その怒りは収まりようがなかった。NHK会長は、外部の有識者で構成される経営委員会による指名だ。葛西氏は安倍氏に最も近い財界人という立場を利用して、経営委員会のメンバーを自分の息のかかった人物に入れ替えた。JR東海が中心になって運営している学校法人「海陽学園」(愛知県蒲郡市)の役員や、小説『永遠の0』(講談社)で特攻隊を美化しすぎたことで映画監督の宮崎駿氏や井筒和幸氏らから強烈な批判を受けている作家の百田尚樹氏らを送り込んだ。そして、葛西氏の意のままに動く籾井氏を会長に指名した。籾井氏とは、自身の哲学も信念もまったくない、葛西氏の意向をオウム返しでしゃべる人物なのである。だから、1月25日の記者会見が世間から批判を受けると、1月27日には「あの発言は不適当だった」と即座に謝罪した。おそらく世論の激しい反発を見て、葛西氏らがアドバイスを送って発言を修正したのであろう。