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今年首位争いで注目の広島カープとオリックス、日本一になると経済効果は300億円?

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広島東洋カープ 公式サイト」より
 海の向こうの米国ではダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)、田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)両投手ら日本人メジャーリーガーの活躍が目ざましいが、国内のプロ野球も前半戦がほぼ終了。6月26日時点での1試合平均の観客動員数は昨年の同時期と比べてセ・リーグは3.6%増、パ・リーグは2.4%増と、例年以上に盛り上がりを見せている。

 後半戦に向けてますます活気を帯びることが予想されるプロ野球で、今年特に注目されているのが首位争いを演じるセ・リーグの広島東洋カープと、パ・リーグのオリックス・バファローズだ。

 読売ジャイアンツ(巨人)や福岡ソフトバンクホークス、阪神タイガースなどのいわゆる“お金持ち球団”ではなく、長年優勝から遠ざかっているこの2球団の躍進が、今年のプロ野球を面白くしているといっても過言ではない。

●両球団とも観客数は飛躍的に増加

 オリックスは前身球団の近鉄バファローズが2001年に優勝してから12年間、カープは主力選手を次々フリーエージェント(FA)で放出してしまう背景もあって、1991年以来22年間もリーグ優勝の美酒を味わっていない。

 しかし、両球団とも今年は成績が好調で、それに伴い観客も増えている。オリックスは昨年、ホームゲームで来場者数3万人を超えた試合が年間4試合だったのに対して、今年はすでに10試合(7月1日時点)。カープは昨年初のクライマックスシリーズ進出を果たした勢いそのままに、多くのファンが球場に足を運んでおり、昨年同時期と比べて観客動員数も26.1%増(6月26日時点)と12球団中1位の増加率となっている。また、カープを応援する女性ファンは“カープ女子”と呼ばれ、さまざまなメディアに取り上げられるなど注目を集めている。

 シーズン前半が終わった時点で首位、もしくは首位争いをしているだけでこの景気のよさとなると、優勝したら一体どうなってしまうのか。よく「○○が優勝すると××億円の経済効果」といったニュースの見出しを目にすることがあるが、この2球団が優勝した場合には、どれほどの経済効果があるのだろうか?

●経済効果はどのように予測?

 そこで、尚美学園大学講師でスポーツビジネスについて研究する江頭(えとう)満正氏に、プロ野球の経済効果について話を聞いた。

 紙面などでよく見かける「経済効果××億円」の経済効果とは、どのように算出されているのだろうか?

「プロ野球が開催されたことで動いた経済の一切合財が入った数字で、そこにはチケット、グッズ、ビール、お弁当、球場までの交通費などすべてが含まれます。プロ野球のナイトゲームが終了した時間から帰れない県外観戦者がどの程度いるかも考えられ、帰れない人は宿泊費と食事代、お土産代を使うだろうということも計算されます。また、過去に巨人や埼玉西武ライオンズ、ソフトバンクなどが優勝した際に開催されたセールでの売上を基に、各チームが優勝した場合にファンがどの程度普段より財布の紐を緩めるかを球団本拠地の人口やファンクラブ会員数、平均観客動員数などから算出し、その数字をすべて足したものが経済効果と呼ばれる金額です」(江頭氏)

 ただ経済効果には、例年と優勝した年を比較してその増加分だけ出す場合と、他の年は関係なく優勝した年に動いた経済効果すべてを含めた数字を出す場合の2種類がある。発表する各機関によってどちらの数字を表しているのかが違うので単純比較はできないそうだが、優勝時に一番恩恵を受けるのが、優勝セールを行える百貨店などの小売店だという。さらに優勝したことで車などの大きな買い物をする家庭も増加するそうで、チームの優勝はそれなりの規模の経済効果が見込めるようだ。

●オリックス日本一で日ハム優勝時と同等の経済効果?

 それでは、カープとオリックスが日本一になった時の経済効果はどのくらいだと予測されるのだろうか?

「全国での経済効果は、この時期ではまだ材料が少なく算出することができないのですが、その球団の地元でどのくらいの経済効果が生まれるのかというのは、過去に各機関が発表したデータからおおよその予測をすることができます。まずオリックスのかつてのフランチャイズのひとつであり、今も多くのファンがいる神戸市が所在する兵庫県を見た場合、10年に内閣府が統計した県民経済計算でGDP18.5兆円という数字が出ています。この市場規模は北海道の18.42兆円とほぼ同じです。06年に北海道日本ハムファイターズが北海道移転3年目で優勝した時の経済効果は220億円ですから、地域の野球熱に多少違いはありますが、これに近い数字になるのではないかと思われます」(同)

 オリックスは地元の地域名が球団名に入っていないなど地域密着感が薄く、同じ関西圏に人気球団の阪神タイガースがあることが影響し、03年の阪神優勝時にもたらされた1455億円という桁違いの経済効果に比べると見劣りするが、それでも220億円と考えれば相当なものである。

●県民から愛されるカープの経済効果は?

 それでは、市民球団として長年広島県民から愛されてきたカープが優勝するとなるとどうだろうか?

「カープの場合は、09年に中国電力の総合研究所が、もしカープが優勝したら 192億円の経済効果があるだろうと算出しています。オリックスより低いですが、広島県のGDPが約10.6兆円ということに照らして考えると、かなり大きな金額といえます。これに近年のカープファンの勢い、広島の県民性などを加味すると、もっと経済効果は上がるでしょう。県内GDPが約17.8兆円の福岡は、03年にホークスが日本一になった時の経済効果が417億円と報じられていますので、この数字と先ほどの中国電力発表の192億円の中間に当たる300億円くらいの数字になるのではないでしょうか。これは広島の経済規模からすると、とんでもない数字だと思います」(同)

 確かに阪神や巨人に比べれば、数字自体はそこまで莫大というほどのものではない。しかし、興行スポーツとしてプロ野球も地域密着化を目指すのであれば、本拠地のファンに愛されることは最も重要であり、カープはまさにそれを体現しているチームといえる。

 親会社が前面に出てくる旧態依然とした球団経営ではなく、球団を地域ぐるみで応援するというフランチャイズ意識が根付くことが、娯楽の多様化した現在でも、プロ野球をさらに盛り上げてくれるファクターとなるはずである。
(文=武松佑季/A4studio)