このほかにも昨年から今年にかけ、高級ホテルのレストランにおける食材偽装表示事件やアクリフーズ冷凍食品への農薬混入事件など、「食の安全」を揺るがす事件が相次いだ。一方で、国内では日々大量の食品が廃棄されている問題も深刻だ。
その昔、繁栄を極めた末に滅んだローマ帝国の市民は食べ物をたらふく食べ、満腹になると羽でのどをくすぐって胃の中のものを出してまた食べたという。その姿は、飽食を当然として食べ物を大量廃棄する現代の日本人と重なるが、今回は食の問題に取り組んでいる民主党の安井美沙子参院議員に、食品大量廃棄の実態と問題点などを聞いた。
–まず、日本における食品大量廃棄の実態について教えてください。
安井美沙子氏(以下、安井) 経済力にものをいわせ、世界中から食料品を買い込む日本の食品廃棄量は年間約1800万トンで、食料消費量の2割を占めています。そのうち、まだ食べられるはずの「食品ロス」は年間500万トンから800万トンにも及んでいるのです。
世界では約8億4000万人が栄養不足に苦しみ、世界各国から途上国へ年間390万トンの食料援助が行われています。その一方で日本では、その倍の量の食品が十分に食べられるにもかかわらず捨てられている現実があるわけです。
その廃棄費用は年間2兆円にも及び、経済的非合理性は否めません。こうした問題についてよく、「もったいない」と言われますが、私はそういう精神論だけでは済まないと思っています。
●「3分の1ルール」の弊害
–政府を挙げて、この問題に取り組むべきということでしょうか?
安井 そもそも流通の世界は企業の自主的なルールで秩序がつくられており、政府が積極的に関与する余地はあまりありません。例えば「3分の1ルール」です。このルールは、製造日から賞味期限までの期間のうち、メーカーや卸が小売店に納入できるのは製造日から3分の1以内に限るという業界ルールです。鮮度に敏感な消費者を配慮して大手量販店が採用し、業界全体に普及したものといわれています。
しかし小売店は在庫を最小限に抑えたいし、メーカーは予備の在庫を抱える傾向にある。よって「3分の1ルール」の納品期間が過ぎると、メーカーは納品できなくなるという問題が生まれました。これをディスカウント店などに回し、再度消費されるようになればいいのですが、ブランドイメージを棄損されたくないメーカー側の理由で、その多くが廃棄されています。食品メーカーの製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供するフードバンクに回されるものもありますが、一部にすぎません。