今回は、同書の著者である経済評論家の渡邉哲也氏に、
・中国が抱える問題点と今後
・中国経済が破綻した場合に、日本や世界の経済に与える影響
・中国の破綻に巻き込まれないためには、どうするべきか
などについて語ってもらった。
●中国が抱える問題の数々
–まず、本書を執筆されることになった経緯をお聞かせください。
渡邉哲也氏(以下、渡邉) 今までに日本経済はもちろん、ヨーロッパ経済、韓国経済などに関しては執筆していますが、中国政府が発表する各種経済統計などの数値が信用できないので経済分析が難しく、中国関連の執筆はすべてお断りしてきたのです。ところが、明らかに数字ではなくて現象面から中国の限界が見えてきました。それも、非常に厳しい状況になっています。従って、明らかになってきた経済事情から中国を読み解くために本書を執筆いたしました。
–渡邉さんは、中国の現状をどのようにとらえていますか?
渡邉 中国はいくつかの問題を抱えていますが、最大の問題は、いわゆる「一人っ子政策」の弊害によって高齢層の労働者が多くなり、経済にとってマイナスとなる構造「人口オーナス(負荷)」という状況に今年、変わっています。
若い労働者は賃金が安いため、若者が多い社会は経済発展しやすいのです。しかし高齢者が多くなってくると、逆に賃金が上がり社会の負担が大きくなるので、国際競争力が落ちていきます。人口オーナス化自体も問題ですが、中国は年金社会福祉制度がほとんどない状態で人口オーナス化してしまったことが、経済に大きな影を落としています。本来、若い人が多いうちに社会保障制度を充実させなければ、高齢者が増えたときに社会が負担を支えられなくなります。すでに中国向けの介護ビジネスの話が出てきていますが、急速な勢いで高齢化が進んでいます。これが今後の発展を阻む最大の要因です。
次に、環境限界が挙げられます。PM2.5(微小粒子状物質)が大きな問題となっていますが、ほかにも、北京郊外70キロまでゴビ砂漠が迫ってきている状態で、黄砂の影響も深刻になっています。北京で空が見えるのは、年間数日という状況になっており、このような状況下で首都として機能するのか不透明です。中国が工業で発展するためには今まで以上の環境破壊を進めていかなければいけないのですが、環境破壊をすると人が住めなくなるという状況にあり、限界に達しているといえます。