貧困にあえぐ若年層の増加が社会問題になって久しい。その中でも、働く単身女性の3人に1人が年収114万以下というデータもある中で、「貧困女子」と呼ばれる女性たちに各メディアの注目が集まっている。
ルポライターの鈴木大介氏が、地獄でもがき苦しむ女性たちの真実にせまったのが『最貧困女子』(幻冬舎/刊)だ。著者は『ギャングース』(講談社「モーニング」で連載中)のストーリー共同制作も務めており、社会の最底辺を暴くフィールドワーカーとして活躍している。
同じ「低所得女子」でも、それなりに楽しい日々を送る地方のマイルドヤンキー女子と、衣食住も確保できずセックスワークでその日暮らしをするしかない最貧困女子とがいる。実際には彼女たちの収入はほぼ同等程度。では、彼女たちの違いはどうやって生まれてくるのだろうか。
崖っぷちでも楽しい「プア充」
100円ショップで日常品を買い溜め、フードコートで仲間とダラダラおしゃべり、休日には大型車で格安ドライブ旅行・・・年収120万程度でギリギリではあるが生活を工夫し、地元の友人らと協力し合い、案外ハッピーに暮らしている「地方のマイルドヤンキー」。彼女らは、貧乏であってもかろうじて頼れる親の縁、地域の縁を持ち、それなりに幸せな生活を送っている「プア充」だ。
しかし、最近では地方の低所得女子が昼間は正規の仕事をしながら夜に週1回ほど風俗店で働く「地方週1デリヘル嬢」となって、セックスワークの世界に参入しつつある。
バイト感覚で風俗に顔を出す彼女らは容姿も良く、デリヘルをやっていることで周囲から羨ましがられている雰囲気さえあるという。
居場所を奪われる「最貧困女子」
その一方、売春などのセックスワークに明け暮れながらも衣食住すら確保できない「最貧困女子」が増えている。
容姿に恵まれておらず、幼いころから虐げられ何も与えられていない女性たちは、低所得女子の受け皿であるセックスワークで働こうとしても、新しく台頭してきた「地方週1デリヘル嬢」に居場所を奪われてしまう。
シングルマザーとして働きながら、同棲相手のDVに悩まされながら、借金を重ねて逃げ続けていくしかない「最貧困女子」たち。同じ低所得でも、それなりにうまくやっている「プア充」からは「そんなの我がまま」「頭がおかしい」と差別の対象となってしまう。
家族・地域・制度(社会保障制度)という3つの縁をなくした「最貧困女子」の中には、路上生活や逃亡生活を続け、「肝臓を売るところを教えてほしい」と言う女性すらいる。「貧困」は、「貧乏」と同義ではない。低所得は当然のこととして、家族・地域・友人などあらゆる人間関係を失い、もう一歩も踏み出せないほど困窮している状態なのだ。
本書は、普段私たちの目には見えない「貧困」が存在しているという現実を教えてくれる貴重な一冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。