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パイオニア、オーディオ王者の没落 自ら成長の道閉ざし巨額負債、カーエレ注力も周回遅れ

文=福井晋/フリーライター

 かつてオーディオファンから「スピーカーのパイオニア」と親しまれた電機メーカー、パイオニアが祖業のオーディオ事業から撤退し、カーエレクトロニクス機器専業メーカーへと生まれ変わる。

 パイオニアは11月7日、家庭用AV、電話機事業とヘッドホン関連事業を音響機器メーカー、オンキヨーに売却すると発表した。これによりパイオニアは祖業のオーディオ事業から撤退することが決まった。同時に、収益性の高いDJ(ディスクジョッキー)機器事業も、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツへ590億円で売却することを発表した。

 これらの事業売却により、約800億円あるパイオニアの有利子負債は、2015年3月期中に340億円程度まで減る見通し。負債圧縮で身軽になった同社は今後、経営資源を主力のカーエレ機器事業に集中して再成長を目指す。

●「開拓者」でありながら、競争優位を保てず

 振り返ると、高度成長期以降のパイオニアの歩みは「新技術で浮沈を繰り返した半世紀」だったといえる。創業は1937年で、創業者の松本望が高音質スピーカー「ダイナミックスピーカー」の国産化に成功し、それを事業化するため翌年に「福音商会電機製作所」を設立したのが始まりだった。

 その後、62年に発売した「世界初のセパレートステレオ」をきっかけに大飛躍を遂げる。時あたかも高度経済成長期で、オーディオブームが沸き起こり「アンプの山水電気」(今年7月に破産)、「チューナーのトリオ」(現JVCケンウッド)と並んで「オーディオ御三家」と呼ばれ、音質を徹底的に追求した製品はオーディオファンの必需品となり、不動の地位を確立した。

 しかし、82年にCDが登場して音楽記録媒体が小型化するとともに、音源技術も音楽記録技術もアナログからデジタルに変わり、御三家の優位性は急速に薄れた。さらにソニーの携帯型音楽プレイヤー、ウォークマンや低価格のミニコンポに市場を奪われ、御三家の時代は終わった。

 オーディオ業界関係者は「オーディオ機器メーカーとして成長の道を閉ざされたパイオニアは、再成長の活路をAV機器に求めたが、ここでチャンスを2度も逃した」と語る。

 一つ目のチャンスとは、得意のオーディオ技術に映像技術を加えて82年に発売した、業務用LDカラオケシステムだ。当時はカラオケブームの全盛期で、高品質の伴奏音と映像を1枚のディスクで再現するLDカラオケは「絵の出るカラオケ」としてヒット商品となり、クラブやスナックで引っ張りだこになった。さらに80年代半ばからは新業態のカラオケボックスがLDカラオケの需要を押し上げた。しかし、その成功に安住している間に92年になると通信カラオケが登場、たちまちLDカラオケは市場から駆逐され、パイオニアは再成長の支柱を失った。

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