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アベノミクスに破壊される農家 農政放棄し市場原理導入、米価暴落で農家に壊滅的打撃

文=小倉正行/国会議員政策秘書、ライター
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アベノミクスに破壊される農家 農政放棄し市場原理導入、米価暴落で農家に壊滅的打撃の画像1農林水産省(「Wikipedia」より/Keramahani)
 昨年12月14日に投開票された第47回衆議選で、西川公也農林水産大臣が立候補していた栃木県2区の小選挙区選挙で落選し、比例代表で復活当選となった。現職の農水相が落選したのは2000年以来14年ぶりの事態となった。選挙戦最終盤には安倍晋三首相が応援に入り、「安倍内閣において農家の所得を倍増していくという大きな目標があります。この目標に向かって政策をしっかりと進めていく、改革すべきは改革する、この力を持っているのは西川さんしかいないという思いで西川さんに農水相をお願いしたのです」と最大級の持ち上げをしたにもかかわらず、民主党候補者に競り負けた。

 西川大臣は12月16日の農水省での記者会見で、総選挙の結果について次のように言及した。

「ちょうど私、農水相で農政の責任者だと、こういうこともありますよね。それで、農業者、やっぱり不満を私に、みんな、こうぶつけてきたと。こういうことは実感としてありましたね、結果的に。特に、私どもに厳しいなと思ったのは、(コメの)概算金(コメ生産量60kg当たりで農協組織が農家に支払う仮渡し金)払いが、栃木県は8000円なんですね。全国は9000円なんですね。それで、もう、8000円しかもらえないという先入観もあった上にですね。8000円だという声を大きくいう人もいましたので、(略)8000円では再生産ができないと、こういうことが、やっぱり大きな投票行動の一つに現れたと思います。(略)農政の責任者である私に批判が集中、最後には来たなと、こう受け止めてます」

 要するに米価暴落の批判が西川大臣に集中して、落選に至ったということを自ら語ったわけである。

 この米価暴落は昨年9月から猛威を振るった。全国の稲作農家を直撃している米価暴落は、2014年産米の概算金が前年よりも最大で4100円、平均で2000~3000円も引き下げられ、多くの産地で60kg当たり1万円以下、それも7000~8000円というかつてない低い水準になっている。この米価水準は、全国平均のコメ生産費1万6356円/60kgの半額以下という水準であるから、生産費さえまかなえない深刻な事態である。

●稲作農家に深刻な打撃

 特に、今回の歴史的米価暴落は、担い手といわれる大規模生産の稲作農家に打撃を与えた。例えば、青森で80haを作業委託等で経営している有限会社では、小作料を支払うと赤字になってしまう事態に見舞われている。秋田の経営面積90haの農事組合法人では、今回の概算金の下落で、法人の年間売り上げは1000万円以上減ると見込まれる。宮城で50haの水田を手がける農事組合法人は、米価による減収は年間1000万円を超える。

 この米価暴落を招いた原因とその被害を拡大させたのが、まさにアベノミクス農政であった。アベノミクス農政は、これまでの自民党農政の延長線上にある。この自民党農政の下で、食糧管理法が廃止され、旧食糧法の計画流通制度や現行食糧法における流通規制が原則撤廃されてしまった。そして、国はコメ買い上げを備蓄目的に限定し、在庫管理も回転備蓄を採用し、一定期間保管した後に飼料米として販売するという棚上げ備蓄の採用を拒否している。また、04年に設立された公益社団法人米穀安定供給確保支援機構も、民間団体で予算も限られており、需給調整を行うには力不足である。結局、アベノミクス農政の下で、コメは市場原理に任されているのである。

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