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ルネサス、吹き荒れるリストラの嵐 8年連続赤字の懸念も 「時間の浪費」の代償

文=編集部
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ルネサス、吹き荒れるリストラの嵐 8年連続赤字の懸念も 「時間の浪費」の代償の画像1ルネサス エレクトロニクス本社(「Wikipedia」より/RenesasEurope)
“日の丸半導体”のルネサスエレクトロニクスに、リストラの嵐が吹き荒れる。2014年12月24日、同社は国内関連子会社の35歳以上の社員を対象に実施していた早期退職者募集に、1725人が応募したと発表した。募集人員は1800人程度だった。退職日は今月31日で、通常の退職金に特別加算金を上乗せして支給し、希望者には再就職を支援する。同社は今回の早期退職制度の実施により、年間148億円の人件費が減ると見込んでいる。

 ルネサスが早期退職を実施するのは通算6度目で、この1年の間だけでも3度目となる。生産拠点の再編に伴い14年3月(応募人数696人)、設計・開発拠点の統合により同年8月(同361人)にも実施している。

 ルネサスは11年3月の東日本大震災で工場が被災して以降、経営危機ともいえる状況に陥り、1万人以上のリストラや大規模な工場の再編を実施し、不採算事業から撤退してきた。人員削減など大きな痛みを伴う構造改革が繰り返されているが、経営再生への道は遠い。

 高機能化が進む世界の自動車用マイコンをメインに据え、「プロ経営者」と呼ばれる作田久男会長兼CEOは、優良企業への三段跳びの脱皮を目指している。

●迷走を続けたトップの人選

 ルネサスは、再生のスタートラインに立つまで足踏みが続いた。12年夏、債務超過への転落を回避するために、当時の赤尾泰社長が米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に出資を要請したと報じられた。

 これに猛反発したのがトヨタ自動車だった。燃費や走行性能を左右するエンジンユニットに組み込む車載用マイコンのシェアは、ルネサスが42%で世界首位。トヨタのハイブリッド車(HV)に使われるマイコンは、すべてルネサスの特注品だった。

 しかしKKRが経営権を握れば、特注品を減らし、儲けが大きい汎用品しか作らなくなる恐れがあったためだ。KKRへの身売りは「新車開発に支障が出かねない」とトヨタは結論づけ、経済産業省に巻き返しを要請した。こうして12年12月、政府系ファンドの産業革新機構とトヨタなど顧客8社が第三者割当増資を引き受けるスキームが決まった。

 本来なら、革新機構が支援を決定した時点でトップを決めていなければならなかったが、折り合いがつかず、仕方なく鶴丸哲哉取締役の内部昇格でつないだ。本格的なトップ候補としてソニーの吉岡浩元副社長などの起用を模索したが人選は難航し、再生に向けての貴重な時間を空費したのである。

●オムロンの構造改革で豪腕を発揮

 ルネサスは13年9月に革新機構から1383億円、トヨタ自動車、日産自動車、パナソニックなど主要取引先8社から117億円、合計1500億円の出資を仰ぎ、再スタートを切った。

 トップの人選は迷走の果てに、オムロン会長の作田氏を起用することで落ち着き、13年6月の株主総会後に正式に就任した。

 作田氏は1968年、慶應義塾大学工学部を卒業、立石電気(現オムロン)に入社。エンジニアとして中央研究所に配属された。本人が営業部門への配置替えを希望し、技術のわかる営業マンの道を歩む。95年に取締役に昇格、経営戦略室長、子会社のエレクトロニクスコンポーネンツビジネスカンパニーの社長を経て、03年に本社の社長に就任した。

 作田氏が経営者として、その手腕が評価されたのは、社長になってからだ。ITバブルが崩壊した02年、オムロンは危機的な状況に追い込まれ、早期退職者を募った。それに伴い、創業家出身の立石義雄社長が引責辞任することになったが、その際、立石氏から「お前に社長のボールを投げたら逃げるな」と言われ、作田氏は「そうなったら、腹をくくります」と応えたといわれる。こうして03年6月にオムロン社長に就任すると、不採算事業の整理など構造改革を断行した結果、就任1年目から業績は急回復に向かった。

 リストラなど修羅場に強い豪腕と、ルネサスが注力する自動車向け電子部品に詳しいことから今回、作田氏に白羽の矢が立ったわけだ。

 足元の業績は堅調だ。15年3月期第3四半期(14年4月~12月の累計)までの業績予想は、売上高が5959億円(前年同期比5.8%減)、営業利益が634億円(同25.3%増)、最終利益が461億円(同353.2%増)となった。自動車用マイコンや産業用半導体などが好調を維持している。ただ、14年10月に売却したルネサスエスピードライバ(RSP)の売却損が足を引っ張った。

 15年3月期の通期業績計画は公表していない。それでも、NECエレクトロニクスと統合する前のルネサステクノロジ時代である08年3月期以来、7年ぶりとなる最終黒字化が視野に入ってきたが、構造改革の進展に伴い、第4四半期(15年1~3月)に設備の除却損など、かなりの額の特別損失が追加で発生する可能性が残されており、予断を許さない状況が続いている。

●ライバルのM&A攻勢に焦り

 ルネサスは14年9月2日、東京都内で開発者向けイベント「Renesas DevCon Japan 2014」を開催した。その場で、作田氏はメディアの取材にこう答えている。

「17年3月期に営業利益率2ケタ、粗利益率45%の目標を掲げている。15年3月期は粗利益率41%を達成できる見込みだ。粗利益率は為替の影響を受ける。12~13年と(円安が進んだ結果の)為替の効果で6%程度、粗利益率はアップした。さらに構造改革による製造コストの引き下げで粗利益率は高くなった」

 痛みを伴う構造改革に、手応えを感じている様子がうかがえる。それでは、いつごろから反転攻勢に出るのか。それについて作田氏は、「競合(企業)の買収のニュースが相次ぐ中で、心中穏やかでないのは事実。けれど、焦って誤った投資を行うわけにはいかない」と、ライバル会社のM&A動向が気になっている様子を正直に語っている。

 まずは17年3月期に4ケタ(1000億円台)を目標に営業利益をしっかり稼ぐことが、作田氏が最初に到達しなければならない目標とみられている。
(文=編集部)

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