“直視すべき”クルマの二面性とは?社会へ与える負の問題と、技術進化の最前線と未来
今回からクルマを中心とした話題をリポートする筆者自身を紹介するために、なぜ人々はクルマに惹かれるのかという持論を書き記してみたい。
クルマには二面性がある。社会へ与える負の問題は、具体的にいうと環境負荷やエネルギー不足、交通事故、騒音だろう。クルマを利用しない人は、そういったクルマの負の問題が気になってしようがない。一方で個人が自由に移動できる手段としての魅力がクルマにはある。最近の燃費のよいクルマなら、1万円もあれば片道500km離れた土地に行くことができる。いつでも、どこまでも陸が続く限り、時にはフェリーで海や湖を越えて、地平線の向こうまで旅ができる。15世紀の大航海時代ではないが、21世紀はクルマによる個人単位の大航海時代が始まったといえるかもしれない。本連載のタイトルを「21世紀の自動車大航海」と題したのには、そんな理由があるからだ。筆者はもともとプロドライバーとしてラリーやレースの経験があるので、DNAには冒険とスピードが刻まれている。
技術進化がもたらす恩恵
遠くに行くなら新幹線か飛行機と相場が決まっているが、最近は高速道路もきめ細かくつながりつつあるので、クルマのほうが楽な場合も増えてきた。カーナビで目的地が丁寧にガイドされ、ETCを使って有料道路料金の自動支払いだけでなく、詳細な道路情報も受け取ることができる。
そしてなによりも2020年頃には初歩的な自動運転が実用化され、不注意からくる単純な追突事故やサグ(緩やかな下りから緩やかな上りに変わる地点。車速低下に気づかない車両が渋滞の原因となる)での不要な渋滞が軽減される見込みもある。クルマはますます便利に快適に進化するのである。しかも今年は環境への対応として水素燃料電池車の発売が始まる、記念すべき年となる。ハイブリッドからプラグイン・ハイブリッドへ、バッテリー式電気自動車から水素燃料電池車へと、クルマの技術進化はとどまるところを知らない。
人々の生活を豊かにし、産業を活性化させるには、クルマは不可欠な移動手段だ。そんなクルマの魅力を伝えながら、山積するクルマの課題も明らかにしていきたい。そして、その課題に向かって、メーカーや政府、専門家はどんなソリューションを考えているのか。刺激的なレポートを提供していきたいと思う。
(文=清水和夫/モータージャーナリスト、日本自動車研究所客員研究員)