そんな中、今年6月下旬にZMP(ゼット・エム・ピー)が、ジャスダック市場に株式を上場している測量関連企業のアイサンテクノロジーや名古屋大学と連携して、自動車の自動運転の公道実験を今年度内に実施すると発表した。この実験は愛知県の「新あいち創造研究開発補助金」の補助対象として採択されている。ZMPはあらゆるものにロボット技術を応用しようというベンチャー企業で、特にロボット技術を活用し、実物の自動車を利用した開発支援を行っている。
今回、3者はトヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」をベースとする実験車両「ロボカーHV」を使って、実験走行を行う。発表資料では、2020年の東京五輪での自動運転実現をゴールとし、5年スパンで公道実験による技術・ノウハウやガイドラインの蓄積・共有を進めるとしている。
ZMPには昨年12月、東証1部上場の音響機器メーカーであるJVCケンウッドが出資している。ケンウッドはさらにZMPと合弁会社カートモを設立。自動車の車載データをリアルタイムに集約し、自動車の運転状態と運転者の行動をインターネット上に蓄積するプラットフォームを運営している。ケンウッド側にとっては、本業であるカーエレクトロニクスとのシナジー効果を追求することが目的と見られている。
ZMPはこれとは別に、インテルのCPU(中央演算処理装置)を搭載した自動運転開発用キット「IZAC」(アイザック)を開発している。インテルから出資を受けて開発した製品の1号で、自動運転のセンサー情報などを高速で処理し、駆動の制御などに反映させることができるという。今後はソフトウエア部品として販売すると見られている。
●デンソーも公道での実証実験
自動運転に関して自動車部品大手のデンソーも同様の実験を計画している。5月に開催された自動車の技術展である「人とくるまのテクノロジー展 2014」に同社は、未来のドライブを体感できる「インタラクティブ・コミュニケーション・コックピット」を展示。モニターを見ながらの模擬運転ながら、20年頃のドライブを表現していた。
これによると乗車してハンドルを握ることで、脈拍などの感知を通じてまずドライバーの健康状況を確認。実際に動き出すと、高速道路などへの進入では車両間の通信を通じて強引な割り込み時の危険を回避。右折時の対向車に隠れた車の情報も認識して安全に運転できるようになっている。そして、自宅付近の電気自動車の充電装置に接近した時点で、自動運転に切り替わり、車庫入れなどを車が認識して行うというもの。こちらは完全な自動運転ではないものの、より現実的な未来を見ることができた。
そのデンソーも、愛知県内の公道で自動運転支援システムの実証実験を行う。自動車部品メーカーとしては初めてで、自動運転実用化のための中核部品の開発を加速するものと見られる。
こうした中、7月に入ってドイツのダイムラーが、自動運転が可能なトラックの試作車「メルセデス・フューチャー・トラック2025」を発表した。25年の実用化を目指すという。
日本が強みを有している自動車業界。自動運転という次世代の技術でも強さが維持できるか、これからの開発競争の行方に、一層注目が集まりつつあるといえそうだ。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)