ビジネスジャーナル > 自動車ニュース > スズキ正規販売店が破産→納車されず
NEW

ジムニー購入・全額支払い先のスズキ正規販売店が破産→納車されず…ディーラーの実態

文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター
【この記事のキーワード】, ,
ジムニー購入・全額支払い先のスズキ正規販売店が破産→納車されず…ディーラーの実態の画像1
スズキの公式サイトより

 5月11日放送の報道番組『newsランナー』(関西テレビ)によれば、スズキやダイハツの正規販売店で新車を購入したが、納品されないまま販売店の事実上のオーナーとみられる人物が破産し、支払い済の代金が戻ってこずに泣き寝入りを強いられるケースが相次いでいるという。大手自動車メーカーの正規販売店といえども、簡単に信用してはいけないのだろうか。自動車購入時の注意点について専門家に聞いた。

 ここ数年、人気車種の納期が長期化している。通常は注文から納車までの納期は1~2カ月程度とされるが、昨年後半にはトヨタ自動車の「ノア」「ボクシー」「ヤリスクロス」やホンダの「ステップWGN」など一部の人気車種で、納期が6カ月~1年以上先となる例もみられるように。さらに、昨年にはトヨタの「レクサス」「ハリアー」の一部タイプについて受注が中止されるという異例の事態も発生(すでに受注再開)。メーカー各社の供給体制は徐々に正常化に近づき納期は短縮しつつあるといわれているが、車種によっては6カ月以上かかるものもある模様だ。

「新車の納車まで待てないという人が中古車に手を伸ばし始めて需要が高まったため、ハリアーなどでは一時、中古車価格が新車価格を上回る逆転現象が起きていた。こうした人気車種は中古車市場でもストックが少ないため、価格が吊り上がる結果となった」(中古車業界関係者)

 そんな人気車種の一つであるスズキの「ジムニー」もまた、手に入りにくい車となっている。初代「ジムニー」は1970年に発売され、2020年には世界累計販売台数300万台を達成するなど、まさに日本の軽自動車の代名詞ともいえる存在。18年に発売された現行モデルは現在も月間販売台数が2000台以上に上るとみられ、その人気に衰えはみえない。そのため、5月現在でも納期は12カ月以上かかるという情報もある。

納車前の全額支払いには要注意

 そんなジムニーをめぐるトラブルが発生している。前出『newsランナー』報道によれば、ある夫婦が奈良県のスズキの正規販売店・A(編注:イニシャルではない)でジムニーを購入したが、Aの事実上のオーナーとみられる男性が破産し、1年半たった現在も納車されていないという。ちなみに夫婦は10年ローンを組み215万円で購入し、現在も毎月、返済が発生しているという。

 一般の消費者にしてみると、大手自動車メーカーの正規販売店と聞けば、信用して納車前に代金を一括で支払ってしまってもおかしくはない。そもそも正規販売店とはどのような存在なのか。自身で中古車販売店も営んでいる自動車ライター、桑野将二郎氏はいう。

「俗にいう自動車販売店(ディーラー)は、特定のメーカーとの特約店契約を締結している販売会社=正規ディーラーと、特約店契約を締結せずに複数のメーカーを扱う販売店=サブディーラーとに二分できます。一般的にディーラーと呼ばれているお店も、実は掲げている看板を見ると違いがわかります。正規販売店は、特定メーカーの自動車のみをCI(コーポレート・アイデンティティー)に則って販売し、点検や整備は自社工場で行い、純正部品しか扱わないため保証が充実しています。メーカー直結となるので、メーカー本体からサービス面や技術面での直接指導があり、安心感が高いのが特徴です。

 一方のサブディーラーは、メーカーからの仕入れではなく、ディーラーから車両を仕入れて販売するので、多様なメーカーの車種を比較しながら取扱・販売ができます。価格についても独自の基準で設定できるため、正規ディーラーより安く買えるというユーザー側のメリットもあります。

 正規販売店というのが、どれを指しているのか微妙なのですが、正規ディーラーとサブディーラーの違いを知っていただいたうえで、今回のニュースの内容を見ますと、スズキやダイハツの車を取り扱っていること、ほかのディーラーより安い値段で販売されていたという証言から、サブディーラーであると考えられます」

 販売店や代理店に前金などを支払ったにもかかわらず、車が納品されないまま終わってしまうというケースは多いのか。

「多くはないと思いますが、昨今のコロナ禍と新車の生産が遅れていたという状況から、今後さらに増える可能性は高いと思います。また、過去に一般的な中古車販売店においては、『お金を払ったけど納車されない』『経営者がお金をもったまま飛んだ』などという話は珍しくはなかったかと思われます。

 一方で実際の話として、私のお店のお客さんの場合、他店で古い中古車をレストアしてもらって乗ると言って、3年前に買ってその際に頭金を払い、オートローンもスタートさせていましたが、先日ようやく納車された、という例もあります。必ずしもそういった取引がトラブルに終わるということではなく、ユーザーとお店側との契約内容や信頼関係によって様々だとも言えます。とくに旧車をレストア販売しているお店との取引ではそういうケースも稀ではなく、逆になかなか納車されずに裁判になっているケースもあります。

 このあたり、新車と中古車の違いもありますが、社会通念上では、高額な自動車の代金を納車されていないのに先に全額支払うということは、ユーザー側の立場からは拒否することもできるでしょう。販売店側から全額支払うように要求するというのも、ちょっと不自然だと感じます。

 ちなみに中古車の場合、一般的には契約時に手付金として成約代金の10%程度を支払って、残金は納車直前もしくは納車時に支払うというケースが多いです。当店でも、成約時にお客さまにこういったお話をして、場合によっては分けて払うのが面倒だからとお客様のほうから申し出られて全額振り込みされるケースは稀にあるものの、基本的にはご成約代金の10%程度を手付金でいただき、納車時に残金をいただくケースが通常だと思います。

 そして、お金を払ったのに納車されないというトラブルにはいろんなパターンがありますが、ほとんどは販売店のキャッシュフローの悪化により、先付けで集金したお客さまのお金を運転資金で消費してしまい、納車するべき車両の仕入れができずにダラダラと先延ばしにして、最終的に破産する、というパターンが多いようです」

車購入時の注意点

 今回のような被害に遭わないためには、車を購入する際には、どのような点に注意すべきなのか。

「あらゆる側面からの注意が必要ですが、下記の点がポイントになります。

(1)新車を買う場合、信頼性を重視するなら正規販売店で、選びやすさや値段を優先するならサブディーラーで、という選択肢があるなかで、サブディーラーは相応のリスクがあると心得ておくことです。昨今のコロナショックと不景気で、経営難に陥っている自動車販売店はたくさんあります。今回のような話は氷山の一角で、今後もまだまだ増えていくのではないでしょうか。

(2)新車に限っていうと、納車されていない車両に対して、先に全額を支払えという商談は怪しいと捉えるべきでしょう。いくら安くても、そういうお店は避けるほうが無難かもしれません。また、中古車の場合は新車と違い、基本的には一点モノなので、買う側は手付金を払って売り止めをかけ、商談権を得るという流れになるため、手付金はマストになってきますが、大量に生産されるなかからオーダーして取り寄せる新車とは、特性が異なるということを、予備知識として持っておくべきです。

(3)ネットなどのクチコミ情報を鵜呑みにしないほうが良いです。販売店によっては、仲の良いお客さんに満点をつけてもらうように頼んでみたり、クチコミで良いことを書いてもらったら特典を付けますなんていうお店も実際にあります。購入もすぐに決めず、お店の人とのやりとりや会話から、そのお店が本当に信頼できるかどうかを判断することも大切です。

 余談ですが、最近は正規ディーラーであっても、利益追求に走り過ぎて異常な行動を起こしているお店の話を耳にすることがあります。実際、私のお客さんの場合、車検で預けたクルマがなぜか必ずパンクしていると指摘され、タイヤを4本交換させられる…という話や、部品交換したと説明された箇所を後日、別の工場で整備してもらったら部品は古いままだった…とか。いくらでもそんな話はあります。これらはすべてメーカー直結の正規ディーラーでの話で、なかには営業停止処分を受けた会社もあります。正規販売店だから100%信用できる、とは思わないほうが良いのかもしれませんね、残念なことですが」

(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)

桑野将二郎/自動車ライター

桑野将二郎/自動車ライター

1968年、大阪府生まれ。愛車遍歴は120台以上、そのうち新車はたったの2台というUカー・ジャンキー。中古車情報誌「カーセンサー」の編集デスクを務めた後、現在はヴィンテージカー雑誌を中心に寄稿。70~80年代の希少車を眺めながら珈琲が飲めるマニアックなガレージカフェを大阪に構えつつ、自動車雑誌のライター兼カメラマンとして西日本を中心に活動する。
NOWORK motor&cafe

ジムニー購入・全額支払い先のスズキ正規販売店が破産→納車されず…ディーラーの実態のページです。ビジネスジャーナルは、自動車、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!