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ハリアーやジムニー、中古車価格が新車を上回り…異常な逆転現象の理由、市場の特殊性

文=文月/A4studio、協力=西村泰宏/「カーセンサー」統括編集長
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トヨタ・ハリアー(「Wikipedia」より)

 中古車オークション大手の「ユー・エス・エス」が発表した月次データによれば、昨年9月の成約車両価格は平均122万1000円となり、過去最高額を記録。今年1月の価格も平均101万9000円と前年同月比で104.0%増となっており、32カ月連続で前年を上回っているそうだ。

 このように中古車価格は値上がり傾向にあるが、興味深いことに一部車種のなかでは、新車価格よりも高い中古車価格が付けられているものもある。たとえば、中古車販売大手「ガリバー」のサイトによれば、トヨタ自動車の人気SUV「ハリアー」のハイブリッド(HV)は、新車価格の482万円に対し、中古車価格が519万8600円と1割近く高くなっている。そのほかにも、スズキの「ジムニーXC」が新車価格の190万3000円で、中古価格239万8000円と3割近く高い。ホンダの「ヴェゼル(e:HEV Z<FF>)」の一部HVモデルは、新車価格が289万8000円で、中古価格が359万8100円と2.5割ほど高くなっている。

 なぜこのような新車と中古車の価格逆転が起きているのか。中古車情報メディア「カーセンサー」の統括編集長・西村泰宏氏に解説してもらう。

現在の中古車高騰は異例の事態

 現在の中古車価格の値上がりは、異例のケースだという。

「中古車価格が新車価格より上がることは基本的にないので、ハリアーにせよジムニーにせよ、通常では発生しない現象だということをご理解ください。では今回のような高騰がなぜ発生してしまうかというと、理由は2つ考えられます。

 ひとつは、中古車価格の値段設定が自由であること。中古車は値段設定の上限が決められていないので、一部車種の価格がプレミア化することは珍しくないです。たとえば、新車の納期が半年以上もかかる特定グレードの車種を価格上乗せで販売することも可能であり、結果、中古車価格が新車価格を上回る現象が起きていると考えられなくはありません。

 実際、近年は新車の納車時期は滞りがちでした。コロナ禍の影響が強かった昨年春ごろまでは、新車を注文して納車を心待ちにしていたのに突然ディーラーから電話がかかってきて、『予定より納期が延びます』と謝罪されるということがよくありました。けれど現在はようやくそうした状況から脱したという印象で、昨年後半ぐらいからは遅延することなく予定時期に納車されるケースが増えてきましたね。ただ注文した翌月に即納車されるといったスピード感は今でも難しいでしょうから、人気車種ですと納車まで数カ月から1年ぐらい待たされることはあると思います」(同)

 各メーカーの公式サイト上に工場出荷時期メドが掲載されている。たとえばトヨタのハリアーを見てみると、1月31日時点で「詳しくは販売店にお問い合わせください」と書かれているのみで、サイトではどれぐらいかかるのかはわからない。その他のモデルは「4-5カ月程度」「6カ月以上」と明記されているので、西村氏が言うように最新人気モデルであれば1年ほど先になるということもありそうだ。

 新車を注文しても納車まで半年や1年もかかるとなると、すぐにその最新モデルに乗りたいという人が中古車を選択肢に入れるようになり、需要が増した中古車価格が高騰することもあるのだろう。

新車価格と中古車価格の違い

「もうひとつの理由は、中古車は最初から諸費用を入れた際の金額を提示しているケースが多いこと。新車価格を見る際、多くの方が車両本体価格を参考にするかと思いますが、車を買うときは法定費用やディーラーオプションなどがかかります。一方の中古車ではそうした諸費用がすでに上乗せ、追加された金額を提示していることが多い。ですから、仮に最終的な総額は新車と中古車で同額ぐらいだったとしても、最初の表示価格は中古車のほうが高くなっているというケースは少なくないでしょう」(西村氏)

 ちなみに、やはり中古価格の値上がりが確認できる車種は近年発売されたモデルが多いという。

「一般論としてマイナーチェンジ、フルモデルチェンジした車種の前モデルは、需要が低下して価格がガクッと落ちる傾向にあるのですが、逆にいえばモデルチェンジ後の現行モデルで5000~1万キロぐらいしか走っていない中古車は、需要が高いわけです。たとえば、2020年6月にフルモデルチェンジされた現行モデルのハリアーは、中古車登録されたとしてもせいぜい1~2万キロぐらいしか走っていないものがほとんど。新車ほどではないにせよ、故障のリスクが少なく安心して走行できることから需要はかなりあるでしょうし、車検も切れていないので販売者側が値段を高く設定するのも考えられることです」(同)

 またディーラーの販売の仕方が変わったことも中古価格へ影響を与えたそうだ。

「ディーラーでは、残価設定ローンによって下取りした中古車を店頭で販売することが増えました。従来はトヨタ、日産、ホンダなどディーラー間で乗り換えを促進し、買い取った他メーカーの車をオークションに流したので、市場内の中古車数も多かったです。しかし現在は、契約しているメーカーの中古車をディーラー内で下取りして販売していることが多くなったので、オークションからは中古車が減少。結果、中古車の価値が上がり、価格も比例して上がってしまったのでしょう」(同)

今年後半には新車販売が回復?

 では総括的に考えた場合、今後中古車市場はどうなっていくのか。

「車載用の半導体不足が落ち着くのが、今年のゴールデンウィークごろだといわれています。それから逆算しますと、多くのメーカーのスタンダードモデルは、夏頃にほぼ回復しているのではないかと思います。もちろん、ウクライナ戦争やコロナの感染状況次第で情勢は変化するでしょうが、順調にいけば2023年後半までには生産体制が元通りに戻っている見込みです。

 とはいえ、国内メーカーに関しては3カ月程度で納車するというスケジュール感には戻るでしょうが、メーカー側が従来どおりの生産・販売の体制に戻さない可能性も高いです。これまでのように在庫をたくさん抱えるよりも、受注型で生産したほうが管理はしやすいでしょうし、かつてのように無理して生産台数を維持する体制にはわざわざ戻さないと思います。また、販売戦略上、一部モデルの生産を抑えたり、他のモデルを販売したりする動きは出てくるかもしれませんね」(同)

 中古車価格が新車価格を上回るという歪な状況は近いうちに解消されるだろうが、事業戦略や生産体制を見直すメーカーが増えるとなると、完全に以前と同じ状況に戻るということでもなさそうだ。

(文=文月/A4studio、協力=西村泰宏/「カーセンサー」統括編集長)

西村泰宏/「カーセンサー」統括編集長カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長

西村泰宏/「カーセンサー」統括編集長カーセンサー統括編集長 兼 リクルート自動車総研所長

リクルートに新卒で入社。2015年より自動車領域の編集に従事し、「カーセンサー」本誌およびネットなどコンテンツ全体のデスク業務を担当。2017年4月に「カーセンサー」編集長就任。2018年4月よりリクルート自動車総研の所長(現職)、2021年4月より「CarsensorEDGE」編集長(現職)を兼任。現在は統括編集長として、本誌、ネットから動画、イベントまで多岐にわたるコンテンツプロデュースを統括している。社外では、2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員として活動中。
カーセンサー

Twitter:@yas_westvillage

Instagram:@yasuhironishimura

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