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小黒一正准教授の「半歩先を読む経済教室」

日本は戦争などまともにできない、もうひとつの理由 中国の国防予算、日本の10倍か

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(出所)防衛省
 土居丈朗・慶応義塾大学教授の3月9日付「東洋経済オンライン」コラム『日本は「戦争をできる国」にはなれない―財政から見た自衛隊の「本当の姿」』が、インターネット上でかなり反響を呼んでいる。


 このコラムでは、(1)日本はすでに対GDP比で2倍もの債務を負っており、戦費を賄うためにこれ以上債務を負おうにも、日本にその余力は残されていないことや、(2)急速な高齢化で自衛隊員の平均年齢は2013年度には全体で、人間に老眼の症状が出始める40歳に近い36.0歳まで上昇していることを指摘し、「巨額の政府債務と歯止めのかからない少子高齢化がある限り、わが国は戦争や軍事衝突などまともにできない国と肝に銘じる必要」があることを言及している。

 この指摘は正しいが、日本が戦争や軍事衝突などまともにできない重要な理由がもう一つある。それは、国際比較したときの国防予算の規模である。ドル換算で1位はアメリカ(5750億ドル、15年)、2位は中国(1317億ドル、14年)である。円換算(1ドル=100円)で、アメリカは約57兆円、中国は約13兆円となるのに対し、日本の防衛予算は約5兆円にすぎない。

 しかも、あまり知られていないが、冒頭のグラフの通り、1998年度と10年度を除き、中国の国防予算は毎年10%超の勢いで伸びている(詳細はこちらhttp://goo.gl/fzXr0N)。

●膨張する中国の国家予算


 では、中国が現在のアメリカの国防予算に概ね追いつくのは何年後か。資産運用の世界で有名な「72の法則」を利用すると、それは簡単にわかる。72の法則とは「資産運用において元本が2倍になる年利と年数とが簡易に求められる法則」をいうが、毎年10%成長する場合、元本が2倍となるのは7.2年後(=72÷10)である。

 つまり、中国の国防予算が毎年10%で伸びる場合、約7年で2倍の26兆円になる。さらに7年たてば、その2倍の52兆円であり、これはアメリカの現在の国防予算に近い。つまり、もし中国の国防予算が引き続き10%を超える伸びを示す場合、現在から14年以内に、中国の国防予算は現在のアメリカと同程度になる。

 このような現状を鑑みると、日本財政の限界を含め、日本が戦争や軍事衝突などまともにできない可能性が高いことは明らかであり、現実的かつ冷静な外交・安全保障の戦略立案が求められる時代が到来しているのである。
(文=小黒一正/法政大学経済学部准教授)