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大塚家具騒動、娘社長が既婚であれば起こらなかったのか 世襲企業における「娘婿」の効用

文=長田貴仁/岡山商科大学教授・経営学部長、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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大塚家具騒動、娘社長が既婚であれば起こらなかったのか 世襲企業における「娘婿」の効用の画像1「大塚家具 HP」より
 ところで、「歴史にifはない」といわれるが、大塚家具社長の大塚久美子氏がもし結婚していたならば、今回の騒動も起こっていなかったかもしれない。いや、これから結婚しないとは断言できないので、未来予測として、今後結婚することも視野に入れて話を進めてみる。

 もし、久美子氏が結婚していた(する)とすれば、今はありえない別の歴史が動いたことだろう。それは、娘婿(久美子氏の夫)が社長になっていたかもしれないという仮説である。

 もっとも大塚家には男兄弟、娘婿がいる。今回の騒動で父・勝久氏側に回った長男・勝之氏は、東京大学法学部を卒業した後、大塚家具取締役専務執行役員営業本部長などを務めた。一部報道によると、長男の家に男子が生まれたことから、直系の孫に同社を継がせるため、昨年7月、久美子氏は社長を解任されたとのこと。次男は久美子氏側についた取締役営業副本部長の雅之氏。勝久氏から「クーデターを起こした」と名指しされた取締役流通本部長の佐野春生氏は、娘婿(三女の夫)である。

 もし、久美子氏と結婚した夫が妻よりも経営者としてはるかに優秀な資質を持ち、佐野氏と違い、勝久氏とうまく渡り合える人物であれば、今回の騒動に至らず、別の解を見いだせたかもしれない。久美子氏は夫の意見を聞き、心変わりしていたという「ストーリー」も想像できる。あくまでも、これは仮定の話にすぎないが、日本企業では娘婿がお家騒動に火をつけるのではなく、あくまで、創業家との融和を保ちながら、より発展に導いた事例が少なくない。

「娘婿企業」スズキの事例

 そこで、典型的な「娘婿企業」を紹介しておこう。

「娘婿がこの会社をだめにした、と後ろ指をさされたくない一心で、これまでがんばってきた」

 こう話すのはスズキの鈴木修会長。その言葉通り、同社を軽自動車大手から、急成長中のインド四輪自動車市場でトップシェアを占め、欧州でも躍進する世界的な小型車メーカーへ脱皮させた。1920年に創業されたスズキでは、二代目以降、現在の会長兼社長の鈴木修氏に至るまで、歴代、優れた娘婿がトップを務めてきた。

 鈴木氏だけでなく、優秀な娘婿が会社を大きく成長させた事例は少なくない。京都の商家では、娘が生まれると父親は大変喜ぶ、といわれている。長男に後継ぎを限定すれば、選択肢が狭まる。万が一、放蕩息子ではなくても経営者としての資質に欠ける人が継承すれば、「売り家と唐様で書く三代目」にもなりかねない。その点、娘婿を後継者に据えようとすれば、世襲を維持しながら選択肢は一挙に広がる。

 一口に世襲といっても、日本と中国、韓国では大きな違いがある。中国、韓国が血のつながりを重んじるのに対して、日本は家の持続的発展を優先し、必ずしも血縁でなくてもよいと考える。その結果、娘婿という制度が必然的に生まれたのである。

長田貴仁

長田貴仁

ビジネス誌「プレジデント」編集部を経て、2005年4月、神戸大学大学院経営学研究科助(准)教授に就任。研究・教育に携わる傍ら、同研究科が設立したNPO法人現代経営学研究所が発行する学術誌「ビジネス・インサイト」の編集責任者を務め、抜本的に改革する。その後、他3大学の社会人MBAや複数の大学の学部でも、客員教授、非常勤講師として教鞭を執ってきた。2013年4月から岡山商科大学に招かれ、15年から18年3月まで2期4年、経営学部長を務めた。日本人学生だけでなく、多くの留学生とも交流を深め、草の根のグローバル化を実践している。所属学会・研究所は、組織学会、日本経営学会、経営史学会、日本ベンチャー学会、企業家研究フォーラム、日本マーケティング学会、日本広報学会、経営行動科学学会、神戸大学経済経営研究所、現代経営学研究所。

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