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コマツの“最強コンピュータ”はなぜ狂った?予測不能な新興国で需要読み違え、本社で悲鳴

文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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 千里眼のように需要を先読みしてくれるはずだった、コマツ自慢のコンピュータ需要予測システムが狂った。

 コマツは4月27日、2016年3月期連結決算は純利益が前期比10.4%減の1380億円となり、2期連続で減益になる見通しだと発表した。同社は、記者会見で2期連続減益の要因を「中国経済減速で建設・鉱山機械の市場が20~25%縮小した。新興国でも需要が減少している」と説明した。

 同日に発表された15年3月期連結決算は、売上高が前期比1.3%増の1兆9787億円、営業利益が同0.7%増の2421億円、純利益が同3.5%減の1540億円だ。ほかの輸出企業と同様、円安の恩恵を十分に受けながら、売上高も営業利益も前年比横ばいを保つのがやっとだった。

 同社は、12年度に策定した中期経営計画(13~15年度)で、建設・鉱山機械需要は13年度を底に徐々に回復すると予測していた。ところが、中国の経済成長減速、新興国の経済成長鈍化、鉱山資源価格下落などの影響で、14年度から主力事業の建設・鉱山機械が大幅な売り上げ減少に陥った。

 特に、12年度まで好調だった鉱山機械・車両の14年度売り上げは前年度比26%減だ。石炭などの価格低迷を受け、体力のない中小資源開発事業者だけではなく、資源メジャーまで新規購入を控え、手持ち鉱山機械・車両を修理しながら使い続ける状況が続いている。

 このため、同社は決算説明会で「現在の経営環境は中計策定時の想定から大きく乖離しており、中計目標の進捗に多大な影響を及ぼしている」と、得意の需要予測の誤りを認めざるを得なかった。

 自信を喪失したかのように、同社が期初から決算の減益予想を発表するのは、リーマン・ショックの影響を受けた09年度以来6年ぶりのことだ。「ダントツ商品、ダントツサービス、ダントツソリューション」の「ダントツ経営」で着実な成長を続け、今や「製造業の優等生」とまでいわれる同社に、いったいなにが起こっているのだろうか。

 関係者への取材から深層を探ると、今はやりのビッグデータを活用したコンピュータ需要予測システム「KOMTRAX(コムトラックス)」に対する過信が見えてきた。

市場の変化をつかめなかった、自慢のコンピュータシステム

 同社の需要予測が狂う兆候は、13年9月から表れていた。ある日、本社の一角で突然、悲鳴のような声が上がる。

「なに、鉱山で使う大型ダンプや油圧ショベルの商談が、国全体でも数件しかないだと?」

 その日、インドネシアの現地法人から送られてきた営業報告は、同国の鉱山機械・車両の冷え切った需要状況を伝えるものだった。本社サイドが分析した「回復基調」の予測は、完全に外れていた。

 その後も需要は回復せず、13年10月下旬、同社は14年3月期の連結営業利益予想を約1000億円下方修正した。

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