電子部品の一部工場閉鎖や国内3,000人の人員削減にとどまらず、最終的には会社の象徴である液晶事業の分社化と本社ビル売却も盛り込んだ。結果的には及第点にも映るが、再建案にはカラクリがある。三菱UFJ銀関係者はささやく。
「最大の焦点は業績の浮沈が大きい液晶事業の切り離しだが、難航している。シャープは過半の株式を保って主導権を握りつつ、官民ファンドの産業革新機構からカネを引き出したい。一方、機構側も過半出資を条件にしており早期に折り合うのは難しい状況。それでもシャープ幹部には危機感が見えない。実は分社化の猶予が2年とも3年ともいわれている」
再建策は液晶事業を分社化して外部資本を注入することで、本体業績への影響を抑えながら新たな事業の柱を模索する構図だ。本来、分社化は早急に手を打たなければならないのだが、異例の猶予期間が設けられた。青色吐息のシャープの数年後など見通せるわけがない。復活に向けた一歩が踏み出せない状況では、再建策が画餅に終わる可能性が高まる。
では、なぜ銀行団はこのような計画を飲まざるをえなかったのか。背景には一部週刊誌で報じられているが、首相官邸の力が作用したとの見方が支配的だ。全国紙記者も漏らす。
「官邸はとにかく、アベノミクスに水を差されたくない。銀行団が匙を投げてシャープが破綻したり、事業を切り売りしたりする方向に話が進めば、景気は冷え込み政権の屋台骨が揺らぎかねない。水面下で官邸から2行に強力な要請があったと聞いています」
巨額減資で苦境鮮明に
シャープは1,200億円以上ある資本金を1億円に減資する方針も決めたが、これも各方面の思惑が錯綜した結果だろう。税制優遇措置を受けられる資本金1億円まで減資することで、剰余金に振り替えて赤字を補てんする格好だ。だが、「累積損失を減らして再建が容易になる」と額面どおり受け止める向きは少ない。