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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(6月18日)

マック、世界的“客離れ”深刻化は、もはや歴史的必然で不可避である 間違い続ける戦略

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授
マック、世界的“客離れ”深刻化は、もはや歴史的必然で不可避である 間違い続ける戦略の画像1マクドナルド本部(「Wikipedia」より/Lomita)

 米国の象徴ともいえる2つのブランドが今、大きな転換期を迎えている。マクドナルドとザ コカ・コーラ カンパニーは第二次世界大戦後、米国の覇権が世界に広まるとともに世界市場に進出していった。だが、21世紀の新しい環境の中で、変化に対応することの難しさが表面化している。

 日本市場を例にとれば、マクドナルドの売り上げが急落したのは、2014年7月に中国工場で期限切れ鶏肉の使用が発覚したことに端を発し、追い打ちをかけるように、今年初めにビニール片などの異物混入が相次いだことが原因にある。しかし、こういったことは消費者が納得するかたちで問題が速やかに解決され、消費者の信頼を取り戻せば、一時的な売り上げ減少で済む可能性もある。

 ところがマクドナルドの売り上げ減少は、もっと根本的なところに問題がある。それは消費者の食べ物に関する価値観が変わってしまったことだ。

 世界の先進国市場において健康志向が高まり、国民の3割が肥満といわれる米国でも14年には過去10年間で最大の売り上げ減少が起きていた。米調査会社テクノミックによると、毎月マクドナルドに通う19~21歳の割合は、この3年間で82.4%から69.5%に減っている。

健康志向の高まりとファストカジュアルの台頭

 高カロリーの肉中心のファストフード・チェーン店に代わって人気を呼んでいるのが、食の安全や健康志向を強調しているファストカジュアルと呼ばれるレストランだ。ファストフードとカジュアルレストランの中間といったような意味で、2000年代末ごろから18~34歳くらいの若者層を中心に人気を得るようになった。

 その中でも一番人気のチポトレ・メキシカン・グリルは、抗生物質不使用の肉や有機栽培の野菜を積極的に使い、新鮮な素材をその場で調理する。1993年の創立だが、15年現在1700店舗を展開し、14年度の売上高は40億ドルを超えた。10年度の売上高が18億ドルだから、毎年20%前後の売り上げ増を達成している計算になる。

 皮肉なことに、このチポトレを育て上げたのはマクドナルドなのだ。98年当時、まだ16店舗しかなかったチポトレに出資し、その後、筆頭株主になっている。マクドナルドの資金のおかげでチポトレは05年に500店舗を展開するまでになり、06年に上場(IPO)を達成。IPOは大成功で、そのタイミングでマクドナルドは持ち株を売却している。結果的には約3億6000万ドル(432億円)投資して15億ドル(1800億円)回収したわけで、“良い投資”だったかもしれないが、マクドナルドはチポトレを買収して子会社とするべきだったと考えるアナリストもいる。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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