しかし、今年4月に予定されていたオープンはいまだ行われておらず、50名雇用されたはずの職員は3月末に全員解雇となってしまった。6月末の現時点においても、病棟は廃墟のようにたたずみ、依然として開業のめどはまったく立っていない状況だ。同病院のウェブサイトも存在しているが、「4月オープンに向けて工事中」と表示され続けている。
地元民も行政も困惑する事態となっているが、本来であれば社会貢献として誇り得るはずの事業がなぜストップしてしまっているのか――。
買収医療法人に反社の影
オーイズミが医療事業参入に当たって買収した医療法人永潤会は、買収の際、やまゆり会と改称された。買収当時は休眠状態だったが、その後にいろいろと不適切な実態が明らかになった。
・永潤会理事長だった人物が、医療機関債詐欺事件を起こした別の医療法人の理事長にも就いていた
・永潤会に隠れ債務があったことが判明し、その支払いを迫られた
・その債権者は去年秋に業務停止処分を受けており、反社会的勢力との疑惑がもたれている
・オーイズミが当該不動産を登記しようとしたところ、債権者から差し止め請求訴訟を起こされ、オーイズミ側は敗訴
オーイズミ側はこれまで、すでに9億円近くの資金を投入済であり、騙されたと主張しているが、14年度決算を発表できず株主総会を延期する事態になっている。上記の経緯について同社側は、筆者の取材に対し「起きていることはそのとおり」と認めている。
もともと予定されていた株主総会は6月26日だったが、延期となり新たな開催日は未定。オーイズミは被害者ともいえるが、一連の事態が同社株主にはほとんど知らされていない。
オーイズミがIRで当該病院について明らかにしたのは過去に2回のみ。最初は12年8月に、高齢者施設建設の基本計画を発表した時。その際は「開業:平成26(14)年1~7月」と記されていたが、結局予定日を過ぎても続報はなかった。そして2回目が今年6月の株主総会延期を知らせるもので、注記としてこの病院建設をめぐる訴訟について申し訳程度に触れられているだけだ。前述の「すでに9億円近く投資している」「4月開院予定が白紙」「職員50人を3月に解雇」「病院建設済のまま放置」といった情報は記載されていない。