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厚木に佇む廃墟の病院の謎…パチスロ企業の病院開設、開業直前に頓挫で建物放置

文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
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厚木に佇む廃墟の病院の謎…パチスロ企業の病院開設、開業直前に頓挫で建物放置の画像1神奈川中央病院のHPより
 オーイズミ(東証一部上場企業)は、パチスロ用メダル計数機メーカー国内最大手だ。同社が本社を置く神奈川県厚木市にあった昭和音楽大学が2007年に新百合ヶ丘へ移転後、同社はその跡地約3300坪を購入。医療法人を買収し、そこに日本初ともいわれる画期的な認知症治療専門病院、神奈川中央病院を開設しようと計画していた。病院開設計画は順調に進み、約170床の規模を持つ病棟も完成に近づき、神奈川県も厚木市もオーイズミ側から開設申請があれば許可する予定であった。

 しかし、今年4月に予定されていたオープンはいまだ行われておらず、50名雇用されたはずの職員は3月末に全員解雇となってしまった。6月末の現時点においても、病棟は廃墟のようにたたずみ、依然として開業のめどはまったく立っていない状況だ。同病院のウェブサイトも存在しているが、「4月オープンに向けて工事中」と表示され続けている。

 地元民も行政も困惑する事態となっているが、本来であれば社会貢献として誇り得るはずの事業がなぜストップしてしまっているのか――。

買収医療法人に反社の影

 オーイズミが医療事業参入に当たって買収した医療法人永潤会は、買収の際、やまゆり会と改称された。買収当時は休眠状態だったが、その後にいろいろと不適切な実態が明らかになった。

・永潤会理事長だった人物が、医療機関債詐欺事件を起こした別の医療法人の理事長にも就いていた
・永潤会に隠れ債務があったことが判明し、その支払いを迫られた
・その債権者は去年秋に業務停止処分を受けており、反社会的勢力との疑惑がもたれている
・オーイズミが当該不動産を登記しようとしたところ、債権者から差し止め請求訴訟を起こされ、オーイズミ側は敗訴

 オーイズミ側はこれまで、すでに9億円近くの資金を投入済であり、騙されたと主張しているが、14年度決算を発表できず株主総会を延期する事態になっている。上記の経緯について同社側は、筆者の取材に対し「起きていることはそのとおり」と認めている。

 もともと予定されていた株主総会は6月26日だったが、延期となり新たな開催日は未定。オーイズミは被害者ともいえるが、一連の事態が同社株主にはほとんど知らされていない。

 オーイズミがIRで当該病院について明らかにしたのは過去に2回のみ。最初は12年8月に、高齢者施設建設の基本計画を発表した時。その際は「開業:平成26(14)年1~7月」と記されていたが、結局予定日を過ぎても続報はなかった。そして2回目が今年6月の株主総会延期を知らせるもので、注記としてこの病院建設をめぐる訴訟について申し訳程度に触れられているだけだ。前述の「すでに9億円近く投資している」「4月開院予定が白紙」「職員50人を3月に解雇」「病院建設済のまま放置」といった情報は記載されていない。

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