引っ越しをしようと思って、住宅情報サイトや引っ越し業者の検索サイトにアクセスしたら、転居した後でも数カ月間、開いたウェブページ上に不動産物件や引っ越し業者の広告がしつこく表示されてしまう――。
もしくは、大学生がインターネット通販で旅行英会話の本を購入すると、しばらくの間、旅行会社や英会話教室、英会話教材、留学斡旋業者の広告がしつこく表示される。自分の親のために有料老人ホームをネット検索すると、国内・海外も含めて有料老人ホーム、介護付きのマンションのネット広告がしばらくの間ワッと表示される。こうした経験を持つ人は多いだろう。
これは「追跡型広告」「行動ターゲティング広告」と呼ばれ、検索、ページ閲覧、広告クリック、購買などネット上の行動記録をもとにその人の興味・関心を拾い上げ、その分野の広告を狙い撃ちして広告効果を上げる手法。今やネット広告の主流といってもいい。「住宅を借りて引っ越ししようと思っている人」「海外旅行に行く予定で、英会話を勉強するつもりの大学生」「有料老人ホームへの入居を検討している老親がいる人」といった属性をつかんで、関連する商品やサービスの広告を集中的にしつこく流す。
「リターゲティング」といって、他のサイトに移動しても同じ広告が追いかけてくる仕組みもある。もし、男性が誤って女性用化粧品の広告をクリックしたら、まったく興味がなくても「お化粧に興味がある」と認識され、女性用メーキャップ化粧品の広告がしつこく追いかけてくることもある。
こうした追跡型広告を「迷惑」だと思う人もいる。嫌なら個人情報保護法に基づいて広告主や広告配信事業者に「広告を配信しないでください」と依頼できるが、たいていの人は方法を知らなかったり、「そんなことを頼んだら、かえって火に油を注ぎはしないか?」と疑って、二の足を踏む。そのため、「迷惑だけど、しばらくすれば収まるだろう」と放っておくことが多い。
それゆえなのか、追跡型広告の効果は大きい。例えば「20代の女性」というように年齢や性別で絞り込むより、「スキンケアに悩む20代の女性」に絞り込むことができれば、スキンケア化粧品の広告主にとってはターゲットを絞って広告が打てるので、ムダは小さく、効果は大きくなる。
だが、近いうちにこの追跡型広告が法改正によって取り締まりが行われ、ネットから消えていく可能性がある。
「迷惑な広告」で買ったものは、新・消費者契約法で取り消せる?
追跡型広告の息の根を止めかねない法律の改正とは、現在見直し作業が進んでいる消費者契約法改正のことである。消費者契約法はもともと、訪問販売や電話での販売を対象に「不当勧誘」から消費者を守るための法律だが、時代に合わせて、その適用をネット販売や広告にも拡大する検討に入っている。01年に施行された消費者契約法第4条第3項は、次のように定めている。