新日本は、2011年に損失隠しが発覚したオリンパスの監査を当時担当しており、その不正を見抜けなかったことが批判を呼んだ。そして3年前には金融庁から業務改善命令を受けたことも記憶に新しい。新日本は英アーンスト・アンド・ヤングと提携し、現在は国内4大監査法人の一角を占めている。にもかかわらず今回の東芝の事件で監査法人としての役割を十分に果たしていなかったことが明らかとなり、日本の監査の在り方が問われる事態となりそうだ。
6月の株主総会で東芝の田中久雄社長(当時)は、不適切会計の把握状況を説明。この時は「累計548億円」と問題会計額を報告したが、90%が公共事業中心のインフラ関連での利益かさ上げで、コストを次期に繰り越す手法がとられていた。
東芝が利益操作をしていた12年7月、新日本とあずさ監査法人の2法人は、10年以上にわたるオリンパスの損失隠しを矯正できなかったとして、金融庁から業務改善命令を下されていた。
「新日本は本来もっと緊張感を持ってクライアントの監査に当たらなければいけなかった。金融庁は業務全般を見直すように新日本に求めていた」(関係者)。
その新日本が、なぜ東芝の利益のかさ上げを見逃してしまったのか。別の監査法人幹部が指摘する。
「公共事業の利益が一期平均100億円も増えるなど、素人がみても不審です。精査していれば、少なくとも不適切な会計処理の手法は見破れたはずです。新日本の責任はあまりに重い、といわざるを得ません。これでは監査法人ではなく、数字が合っているかどうかだけを調べる単なる“計算法人”にすぎません」
関係者によると、オリンパス損失隠し事件を告発した証券取引等監視委員会のある委員は、東芝事件の概要報告を受け、「また新日本か」と嘆いたという。
「新日本に対し、金融庁は業務改善だけでなく、『一定期間の業務停止命令』を視野に入れて事態の推移を静観しているもよう」(関係筋)。第三者委員会報告がまとまった現在、早くも監査法人の責任追及と現在の監査制度改善を求める声が広まっている。
(文=編集部)