8月に『人工知能に負けない脳 -人間らしく働き続ける5つのスキル-』(日本実業出版社)を上梓した脳科学者の茂木健一郎氏に、
・人工知能の発展で、人間の仕事はどう変わるか
・人工知能と人間の棲み分け方
・ビジネスパーソンが磨くべき能力
などについて話を聞いた。
人工知能の発展に伴い、社会はどのように変わっていくか
–人工知能が今後、人間社会でどのような役割を担っていくとお考えですか。
茂木健一郎氏(以下、茂木) 一言で表すと、「油断しているとヤバイ」って感じです。かつて肉体労働は重機が発明されたことで必要なくなりました。飛脚は足の速さに意味がありましたが、電車や自動車の発明により意味を持たなくなりました。
今起ころうとしているのは、ホワイトカラーの職が恐らく消えていき、同時に新しい職が生まれようとしています。そのため、求められる能力が変化していくと思います。
人工知能は、ビッグデータを基に分類、パターン認識するのは得意です。その類いの仕事は人間が行う必要はなくなります。むしろ、人間が行うより人工知能に任せたほうがうまくいくようになるでしょう。
したがってビジネスの場においては、人工知能がどのように発展していくかを注意深く見ていなければ、自分の能力がコモディティ化(不明瞭化、均質化)して、食べていけなくなる可能性があります。
–人工知能によって職が奪われる危険については、米経済学者のアンドリュー・マカフィー氏らが著書『機械との競争』の中で指摘していますね。やはり事務的な仕事は今後なくなっていくのでしょうか。
茂木 脳を研究する立場から言わせてもらえば、人間の脳ができることを人工知能がすべてできるわけではありません。人工知能が得意なことは人間がやる必要はなくなる、ということです。逆にいえば、人工知能を使いこなせばビジネスはさらに向上していくでしょう。その見極めが個人としても、組織としても重要になってきます。