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鈴木領一(すずりょう)のビジネスの超ヒント!

悲惨すぎる歯科業界!年収2百万円以下、廃業の嵐…なぜあの医院には国内外から患者殺到?

文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー
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 コンビニエンスストアより数が多く、競争が年々激化し、年間1600軒が廃業する過酷な世界。それが歯科医院の現状だ。

 2012年厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、歯科医院は全国に6万8701軒あり、歯科医師は10万2551人となっている。

 歯科医院の競争激化は、歯科医師の収入にも大きな影響を与えており、4人に1人は年収200万円以下で、100人中5人は申告所得がゼロだという。歯科医師は人口10万人に対して50人が妥当とされているが現在は約80人で、この数字からみても過酷な競争が想像できる。20年前に比べて歯科医師1人当たりの患者数は半分に落ち込み、かつて花形だった歯科医師の面影をみることはできない。

 しかし、このような激烈な競争の中で、患者の来院を伸ばし続けている歯科医院がある。北海道帯広市にある、医療法人社団いのうえ歯科医院である。同医院には、口コミで日本全国から患者が来院し、海外から来院する患者もいるという。

 理事長の井上裕之氏は、累計110万部を超えるベストセラー作家としても知られている。井上氏は、「歯科医院の経営も、人生も、成功には共通点がある」と語る。井上氏は、歯科医院の経営ノウハウを、『患者様から愛される「歯科医院の作り方」』と題した講座で公開した。

マーケティングを強化し、かえって患者を遠ざける歯科医院

 井上氏に、混迷する歯科医院の現状について聞くと、次のような答えが返ってきた。

「売上至上主義になり、小手先のテクニックに陥っている歯科医院が多くなっています。競争が厳しいからという理由も理解できますが、それが患者様の離れていく要因になっていることに気づくべきです」

 井上氏によれば、患者の奪い合いに勝つためにマーケティングを強化する歯科医院が増えてきているという。広告に膨大な投資を行い、一人でも多くの患者を獲得しようとしているのだ。ただでさえ経営が厳しい上に広告に大金を投じ、その結果患者が増えてくれれば良いが、多くのケースでは患者獲得に至らないようだ。

「華美な広告に引き寄せられた患者様は、現実とのギャップに失望しているのです。多くの歯科医院が『本質』を見失っています。私の医院が成功しているとすれば、この本質を大事にしてきたことに尽きます」(同)

患者とのコミュケーションが最重要

 いのうえ歯科医院には、他院から転院してきた患者が多い。その患者に「なぜ転院されてきたのですか?」と聞き取り調査をしたところ、最も多かった回答は「歯科医師とのコミュニケーション不足」だったという。

「多くの歯科医院は患者様を粗雑に扱っています。しかし、歯科医師にはその自覚がありません。『自分たちのやり方は患者様に受け入れられている』と思い込んでいるのです。当院に転院されてきた患者様の多くが、『先生とコミュニケーションが取れないことが辛かった』と答えています。

 患者様は不安を抱えて来院されています。医師は患者様の心に寄り添い、まず心の不安を和らげていただくことが重要であると、私は考えています。それが私のいう本質です。いのうえ歯科医院に口コミの患者様が多い要因のひとつが、コミュニケーションを重視している点にあると思います。それは広告より何十倍も影響力があります」(同)

 いのうえ歯科医院では、治療プロセスごとにどのように患者に声をかけるかを明確化しているという。治療前の丁寧な治療計画の説明、治療中に「痛い」かどうかの確認、治療後の不安の解消など、細やかな配慮を行っている。コミュニケーションとは、ただ患者と話をすればいいわけではない。不安を解消し安心を与えるという本質に根ざしていることが重要だ。

わずかな違いが患者の信頼を勝ち取る

 また、「清潔感」も患者に安心感を与える重要な要素であり、「椅子の隙間に挟まった小さなゴミにも気づく細やかさがなくてはならない」と井上氏は言う。

 いのうえ歯科医院では、12のポイントを厳しくチェックし、患者が無意識に「この歯科医院は信頼できる」と感じられる雰囲づくりを行っている。詳細は、『患者様から愛される「歯科医院の作り方」』を参照していただきたい。

「神は細部に宿る」というが、誰も気づかないところへの気配りも、井上氏のいう成功するための本質なのだ。

「成功する歯科医院と、そうでない歯科医院の違いは、毎日のごくわずかな差、『微差』にあるのです」(同)

幅広い知識が視野を広げる

 さらに井上氏は、伸びない歯科医院の特徴として、「歯科医師が、歯科以外のことを勉強していない」と指摘する。大学時代から歯科以外の勉強をすることなく、歯科医師とだけしか付き合わない医師が多い。「知識を吸収し技術を身につけることは重要だが、それだけで成功することはできない」と断言する。

「私が歯科医師として患者様に支持されているのは、幅広い分野に関心を持ち、価値ある知識を身につけたからだと思います。幅広い知識を身につければ、人にはない視点を持つことができ、より本質とは何かを見分けることができるようになります。私が歯科医師だけでなく作家としても成功できたのは、広い視野を持つことができたからだと思います」(同)

 いのうえ歯科医院は、歯科医院としては珍しくISO9001(品質管理)とISO14001(環境負荷低減)の双方を取得している。さらに井上氏は、ISO議長であるナイジェル・H・クロフト博士の協力を得て、新しいデンタル・マネジメント・システムを構築中だ。

 これがいのうえ歯科医院の圧倒的な信頼のベースになっていることは言うまでもないだろう。これも井上氏が幅広い勉強をし、他者と異なる視点を持ち得た成果である。

 競争に打ち勝つために広告やマーケティングに力を入れ、結果的に転出する患者が続出する歯科医院と、確実に患者を増やすいのうえ歯科医院には、根本的な考え方の相違がある。

 それは、患者視点で「愛される歯科医院」をつくろうとしているかどうかである。売り上げを増やそうと躍起になる歯科医院と、患者に寄り添い本質を重視する歯科医院。どちらに患者が来るかは明白である。

 しかし、これほどシンプルなことさえもわからなくなるほど、現在の歯科医院の世界は混沌としているともいえる。逆にこういう時代だからこそ、本質に気づいた歯科医院は成功するのだろう。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー)

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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