本日(1月25日)付日本経済新聞朝刊は、セール開始時期をめぐり混乱する百貨店業界と、孤立を深める三越伊勢丹の動向について報じた。例年、百貨店は7月1日に一斉に夏のセールを開始するが、昨年は異変が起きた。「ファッションなど価値を売る百貨店にとって、盛夏にバーゲンするなんて自己否定だし、正価で購入した顧客に失礼」(大西洋・三越伊勢丹ホールディングス社長)との理由で、三越伊勢丹のみ開始時期を2週間遅らせ、取引先のオンワード樫山、三陽商会などアパレル大手も同調した。この動きに対し、他の百貨店の対応は分かれた。高島屋や東急百貨店はアパレル大手の意向を汲み、三越伊勢丹に追随。大丸松坂屋百貨店、そごう・西武は従来の開始時期となった。
こうした混乱は消費者を戸惑わせた。例えば、例年通り7月1日にセールを開始したある百貨店では、他のテナントが値下げをする中、オンワードは通常通りの価格で販売した。百貨店で売られる商品の大半は取引先が卸し、価格決定権も取引先にあるからだ。消費者からしてみれば、百貨店に足を運んでも肩すかしをくらう格好となり、加えて、各百貨店のセール時期がずれたため、結果的にどの百貨店も夏のセールの売上高が前年を下回った。セール時期を遅らせた高島屋の鈴木弘治社長は、「消費者本位ではなかった」と語る。
そして今年1月、三越伊勢丹以外の百貨店は、例年通り初売りと同時に冬のセールを開始し、オンワードを含む大手アパレルも追随した。業界トップ同士でオンワードと盟友関係を構築していた三越伊勢丹は孤立し、同社幹部は「オンワードに裏切られた」と悔しがっているという。
しかし、1月18日、他社から2週間遅れでセールを開始した伊勢丹新宿本店前には、平日にもかかわらず、4000人もの行列ができた。同社社長の大西氏は、「我が道を行くだけ」と語ったという。
(文=編集部)