この8年間で1000人を超える従業員が退職――。
長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」に関する「週刊文春」(文藝春秋/12月20日号)のこの報道について、筆者がハウステンボス労働組合に聞いたところ、事実であることが確かめられた。
2010年に旅行代理店エイチ・アイ・エスに経営譲渡されて、経営破綻からV字回復を果たしたことで知られるハウステンボスだが、入場者数は16年度以降は3年連続で前年度比マイナスとなっている。ハウステンボスに未来はあるのか。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏から聞いた。
薄いワクワク感
「ハウステンボスの1300万球を使ったイルミネーションの美しさは、日本一と言えるでしょう。ただそれを見たあとが困っちゃうんです。東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)だったら、東京や大阪の街に近いですから、どこかに出て行けばいい。ハウステンボスに行った時に、どうしても博多で食事したかったんです。イルミネーションは17時くらいから見られますけど、博多に出るには18時くらいに電車に乗って2時間くらいかかる。
泊まる場合は、ハウステンボスのなかで食べるしかないですけど、地元のフードを入れているのはいいですけど、けっこう高いんですね。1人で5000円から1万円は平気でいってしまう。食事は安くすませたいという若い人なんかには、負担じゃないですか。ディズニーRやUSJだったら、コンビニエンスストアもあるし、高いお金を払って美味しいものを食べたいという場合の店もいっぱいある。ハウステンボスの場合は選択肢がない。
ホテルにもそれはいえます。ロボットが働く『変なホテル』は比較的ローコストですけど、ビジネスホテルほどではないですから。3年前に取材した時には、九州から来ている客が5割とのことでした。車で来る日帰り客にはいいのかもしれませんが、遠方からの客はなかなかリピーターにはならないんじゃないでしょうか。オランダの街をイメージしているというのはあるにしても、ディズニーRやUSJのようなワクワク感はないのかなという感じもします」
博多や長崎から遠いという、ハウステンボスにはどうにもできない立地の悪さがある。逆に考えれば、いかにしてV字回復はなされたのか。
「エイチ・アイ・エスの澤田秀雄社長がハウステンボスの社長に就任した時に掲げたのが、脱オランダだったんですね。その象徴的な試みが、イルミネーションです。相模湖のイルミリオンや東京ドイツ村のイルミネーションも素晴らしいですけど、それらと比べてもスケール感がまるで違う。アクセスが悪いわけですけど、それでも行きたいと思わせる、日本一のレベルです。
ハウステンボス内の劇場『ミューズホール』で公演している『歌劇 ザ・レビュー ハウステンボス』も、さすが宝塚歌劇団やOSK日本歌劇団の出身者で結成されただけあって、きちんと組織されていてクオリティは高いです。ファンになった客は、何度もハウステンボスを訪れるでしょう。いろいろ批判はあるけど、あれだけ条件の悪いなかで再生させたことは高く評価できます。澤田社長は自分で乗り込んでいって、年の半分は向こうにいる生活で、本気でやってきたんだと思います」