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ZOZO離れ、本格化はこれからか…PB事業が125億円赤字、安物ブランド化に反感も

文=A4studio
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ZOZO離れ、本格化はこれからか…PB事業が125億円赤字、安物ブランド化に反感もの画像1「ZOZO HP」より

 2019年に入り、各メディアで“ZOZO離れ”という言葉が盛んに飛び交うようになった。ZOZOが運営するファッション通販サイト「ZOZOTOWNゾゾタウン)」から、オンワードやミキハウス、ライトオンといった著名ブランドが次々と撤退しているのである。

 この不穏な流れを生んだのは、ZOZOが昨年12月25日にスタートした有料会員サービス「ZOZOARIGATO(ゾゾアリガトー)メンバーシップ」(以下、ZOZOARIGATO)だ。年額3000円あるいは月額500円(どちらも税抜)を支払うことによって、ユーザーはZOZOで常時10%の「ARIGATO割引」を受けられる。その割引額は日本赤十字社など、ZOZOの指定団体に寄付することもでき、ZOZOARIGATOには社会貢献の側面もあるというのだ。

 お得に買い物をしたいユーザー、そして寄付のあった団体はZOZOに“ARIGATO”と感謝したくなるだろうが、ZOZOTOWNに出店しているブランドの立場からすると、そう簡単な話ではない。自分の意思とは無関係に割引価格で販売されてしまうため、日頃は安易にセールを行わないブランドなどの場合、ブランドイメージが傷つきかねないのである。

 ただ、今年1月31日に開かれた2019年3月期第3四半期の決算説明会で前澤友作社長が明かしたところによると、ZOZOARIGATOが原因でZOZOTOWNへの出品を中止したのは42ブランド。これは全1255ブランド中の3.3%にすぎず、2月26日のプレスリリースでは「本年2月24日(日)時点での取り扱い商品数が前年同日対比で14.6%増加しており、ZOZOTOWN全体に与える影響は限定的であると考えております」とも発表された。

 結局、4月にZOZOは5月いっぱいでZOZOARIGATO を終了させると発表したが、強気の姿勢を見せ続けるZOZOの今後について、タレントのスタイリングやファッションコラムの執筆を手掛ける森田文菜氏に話を聞いた。

渦中の割引サービスは、ZOZOとの関係を整理する契機に

「私自身、ZOZOTOWNは頻繁にチェックしています。スマートフォンアプリをダウンロードしていると、値下げや在庫の最新情報をお知らせしてくれるのですが、ZOZOARIGATOという割引サービスに関しては、本当に突如として現れた印象でした。報道によれば、ZOZOTOWNに出店している各企業も、私のようなユーザーと同様に驚いていたようですね。ZOZOは各企業に対面で説明したわけでもなく、メールで一方的に割引サービスの開始を告げたようで、そこがまず反発を買ってしまったポイントなのでしょう。

 老舗のブランドや、セール時期にしか割引をしない方針のブランドなどは、商品を安売りしているようには見せたくないはずです。また、ZOZOARIGATOの割引額はZOZO側が負担するとはいえ、常に10%割引で買えてしまうとなると、自社のECサイトの集客にも影響が出ます。

 ZOZOTOWNでは現在、商品価格の表示パターンをブランド側で選べるように仕様が変わり、ZOZOARIGATO未加入者に対しては割引後の値段を非表示にすることも可能になりました。やはりみなさん人間ということで、こうした対策も含めて各企業への事前の相談があれば、反応はまた違ったのかもしれません。ZOZOには、もっとうまく交渉する余地があったのではないでしょうか」(森田氏)

 一方で森田氏は、今回ZOZOTOWNから撤退したブランドは、遅かれ早かれ同じ道をたどっていたのではないかとも語る。

「ZOZOTOWNへの出店には手数料がかかりますので、自社だけでやっていけるのなら、当然それが一番です。InstagramなどのSNSが全盛のこの時代では、わざわざZOZOTOWNに頼らなくても自分のブランドをアピールできますし、すでにそこそこ名の知れたブランドであればなおさらでしょう。

 しかしユーザー側の視点ですと、私の周りにもZOZOTOWNのユーザーは大勢いますので、そこまで“ZOZO離れ”が進んでいる実感はありません。忙しい人なら洋服の買い物は全部ZOZOTOWNで済ませてしまうこともあるでしょうし、大半の人はZOZOTOWNのシステムについて深く考えず、『安くてちょうど在庫があって、すぐに届くなら便利だ』ということで利用しているのだと思います」(同)

ZOZOTOWNは消えはしないが、これ以上の成長も望めない?

“ZOZO離れ”と騒ぎ立てるメディアと、現実のZOZOTOWNユーザーの間には温度差があるということか。だが、ファッション業界におけるZOZOTOWNの立ち位置は、昔と今では確実に変わってきているらしい。

「2004年12月にZOZOTOWNのサイトがオープンした当初は、まさに“街”のセレクトショップを回遊しているような、ファッション感度が高い人向けの洗練されたデザインだったと記憶しています。

 ただ、世の中で“プチプラ”の人気が上昇してくると、ZOZOTOWNにも若者好みの安価なブランドの出店が目立つようになりました。そこにスマートフォンの普及が重なり、誰でも手軽に買い物ができる時代が来たことで、ZOZOTOWNは台風のように拡大していったのでしょう。『ZOZOTOWNを見れば、ほとんどのブランドがチェックできる』という評価を獲得したということですね。

 ところが最近は、タイムセールや○%オフなどと安さを前面に押し出しているのが目についてしまい、その安っぽい雰囲気は考えものかもしれません。ZOZOARIGATOも、ZOZOTOWNに初めて会員登録した人は最初の1カ月だけ割引率が10%から30%に上がり、高価格帯のブランドで買い物をするのなら効果は絶大なのですが、そもそもZOZOTOWNのユーザーは、その手のブランドを欲しがるほどファッションが好きなのかという疑問もあります」(同)

 森田氏いわく、ZOZOTOWNの人気アイテムランキングでは、ZOZOTOWNでしか見かけたことのないような安いブランドも上位に来ているとのこと。こうした状況が続けば、ある程度の価格帯以上のブランドは今後、ZOZOTOWNに出店する旨みを感じられなくなるだろう。もしかすると“ZOZO離れ”は、ここからが本番なのかもしれない。

 そしてZOZOは、昨年1月から展開中のプライベートブランド「ZOZO」が125億円の大赤字という別の問題も抱えている。これについて、森田氏はどう捉えるのか。

「ユーザーに『ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)』と名づけたボディースーツを配布し、その採寸データを活用すれば自分に合ったサイズの商品をオーダーメイドできる、というのが『ZOZO』のウリです。

 ですが私自身、雑誌の特集で男性の方に『ZOZO』のデニムを穿いてもらう企画を担当したものの、現場では、ZOZOSUITで正確に身体を測るのは大変だという話になりましたね。私も自分用に注文したデニムはウエストがガバガバで、結局は返品してしまいました。先日もパーカやチノパンが『ZOZO』の新商品として発売されましたが、最初は目新しさで飛びつくユーザーがいても、『これは微妙だ』と一度でも思われてしまったら、それきりリピートはないでしょう」(同)

 最後に、これらの話を踏まえて、ZOZOの5~10年後の未来を森田氏に占ってもらった。

「ネット通販の快適さにユーザーが慣れている限り、ZOZOTOWNはなくならないと思います。サイトの閲覧数が多いのも事実ですし、ZOZOARIGATOで撤退したブランドとは対照的に、ZOZOTOWNが消えてしまうことで困るブランドだって出てくるはずです。

 もっとも、現状のままでは、さらなる爆発的な成長は見込めないでしょう。ファッション業界では話題性も必要だとはいえ、あまりにも尖りすぎてしまうとユーザーがついてこられなくなるのが難しいところ。前澤社長がプライベートであれこれと話題を提供しているのも、ZOZOにとってはひとつの戦略なのかもしれませんが、それが洋服の本質的な部分に還元されないようでは、企業イメージの低下は避けられません。ZOZO独自で何かを行うよりも、他のブランドと協調していくべきなのではないでしょうか」(同)

 ZOZOARIGATOにZOZOSUIT、さらに振り返れば“ツケ払い”など、ずっと大胆な施策で世間の関心を集めてきたZOZO。“ZOZO離れ”という評価をはねのけるために、次はどのような策を打ってくるのだろうか。
(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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