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積水ハウス、人事抗争再発…経営陣が隠す“地面師詐欺事件”報告書をネット上で公開

文=編集部
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積水ハウス前会長、現経営陣刷新を株主提案へ(写真:東洋経済/アフロ)

 積水ハウスの土地取引をめぐる詐欺被害に端を発した人事抗争で、2年前に解任された和田勇・前会長兼CEO(最高経営責任者)は2月17日、都内で記者会見を開き、4月の株主総会向けて、経営陣刷新を求める株主提案をしたことを明らかにし、以下のとおり主張した。

「東京・西五反田の土地に絡んで、同社が55億円を騙し取られた地面師事件が、単なる詐欺被害ではなく、阿部俊則・現会長(事件当時・社長)らが『経営者として信じがたい判断を重ねた』ことによる経営責任は大きい。詐欺の可能性を指摘する声や警察の介入があったのに、取引を急いだのは不可解だ」

 阿部氏らが、この問題に関する社内の調査報告書の公表を避け続けていることも「隠蔽」と非難。「やましいところがなければオープンにすべきだが、明らかにしようとしない」と語り、現経営陣が地面師事件に関して説明責任を果たしていないと批判した。

クーデターで解任された和田氏

 事件は和田氏が会長だった2017年に発覚した。和田氏が18年1月に行われた取締役会で、この土地の決裁に関わった阿部社長(当時)に退任を求めたところ、阿部氏を除く10人の取締役の賛否が5対5に分かれ、この提案は流れた。今度は、阿部氏が和田会長の解任動議を出し、和田氏を除く10人の取締役のうち6人が賛成して可決した。

 地面師詐欺事件の責任をとらせ、阿部氏を退任に追い込むのが和田氏のシナリオだった。これを察知した阿部氏が、解任を仕掛けた和田氏をクーデターで返り討ちにした。

 和田氏を追い落とした後、阿部会長、稲垣士郎副会長(事件当時・副社長)、仲井嘉浩社長(同・取締役)のトロイカ体制ができあがった。積水ハウスの取締役任期は2年で、4月の定時株主総会は改選期にあたる。和田氏は自身を含む取締役候補11人の一括選任を提案した。阿部会長や稲垣副会長、仲井社長らの再任を阻む意向を示している。

 和田氏らは取締役に選任された場合、第三者委員会を立ち上げて地面師詐欺事件の究明を進めるという。株主総会に向けてプロキシィー・ファイト(委任状争奪戦)へ発展することになる。

現役の取締役、勝呂文康氏を社長に擁立

 積水ハウスは2月17日、株主提案に関する書面を受理したと、情報を開示した。

1.提案株主:勝呂文康氏(取締役)と和田勇氏(元取締役相談役)

2.株主提案の概要

(1)提案する議題:取締役11名選任の件

(2)議案の要領:取締役候補者11名を一括して、取締役に選任すること。

社外取締役候補:クリストファー・ダグラス・ブレイディ氏

        パメラ・フェネル・ジェイコブズ氏

        岡田康司氏、佐伯照道氏、岩崎二郎氏

        齊藤誠氏、加藤ひとみ氏

社内取締役候補:勝呂文康氏、藤原元彦氏、山田浩司氏、和田勇氏

 社長候補は、現役の取締役専務執行役員の勝呂文康氏。解任された和田氏の後任として国際事業を担当した。和田派の筆頭と目され、今年の株主総会で取締役を外されるのは確実と見られていた。

 藤原元彦氏は43歳の若さで本部長となったエース中のエース。首都圏の要の神奈川営業本部長を務めたほど。昨年6月、常務執行役員を退任した。山田浩司氏も昨年まで北米子会社のCEOだった。2人とも、和田派として粛清された。和田氏は代表権を持たない取締役会議長になるという。

 和田氏が求めた11人の取締役候補のうち、クリストファー・ダグラス・ブレイディ氏は米投資銀行業務のチャート・ナショナルのトップ。もう1人のパメラ・フェネル・ジェイコブズ氏は米スパウティング・ロック・アセット・マネジメントのESG(環境・社会・企業統治)投資の専門家だ。

米国から反撃の狼煙

 和田氏は米国から反撃を開始していた。昨年11月、「Save Sekisui House」という名のウェブサイトが立ち上げられた。積水ハウスの現経営陣を告発するサイトである。英語版と日本語版があり、その「ミッション・ステートメント」にはこう書かれている。

<SAVESEKISUIHOUSE.COMは、日本企業及びその他アジアに拠点を置く企業のコーポレート・カバナンスの改善を目的とする情報ウェブサイトです。本ウェブサイトは積水ハウスの株主、従業員、あるいは積水ハウスを含む日本企業及びその他アジア企業のコーポレート・ガバナンスの向上・改善に関心のある方々からの情報提供を歓迎致します。本ウェブサイトでは、積水ハウスの一部取締役に対する地面師事件及びその後の情報隠蔽の責任を追及する株主代表訴訟に関して、情報を随時更新しておりますので、頻繁に本ウェブサイトを確認されることを推奨致します>

 このサイトには、調査報告書が掲載されている。一部個人名は個人情報の観点から黒塗りになっているが、全文を読むことができる。<調査報告書を隠蔽して、株主に公開しないのはガバナンス(企業統治)に問題あり>と糾弾している。

機関投資家がカギを握る

 株主提案を通すには議決権の過半数の賛同が必要になる。和田氏側は全体の1%未満の株式しか持っていない。他の株主の賛同を得なければならない。そのための切り札としたいのがコーポレート・ガバナンス。そこで、阿部会長らは自分に都合の悪いことが書かれている調査報告書を隠蔽しているとする“事実”を前面に押し出した。「透明性のあるガバナンス体制をつくるのが最大の目的」と狙いを語っている。

 和田氏が期待しているのが、世界最大の年金資産規模を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だ。GPIFは2018年10月、積水ハウスを環境株式指数に選定した。国内株式の運用は機関投資家に委託しており、GPIFは大株主名簿に載っていない。運用委託先が議決権を行使する。

 コーポレート・ガバナンスの透明性が問われることになる。GPIFが不適格と判断すれば、会社提案の取締役に反対票を投じ、株主提案に賛成票を入れることもあり得る。積水ハウスの所有株式割合は、機関投資家などの金融機関が41.27%、外国人が22.74%(19年1月決算時点)。和田氏は機関投資家や外国人投資家の支持を取り付けたいとしている。

 昨年、LIXILグループで創業一族の潮田洋一郎氏に追い出され瀬戸欣哉氏が、株主提案を経てトップの座に返り咲いた。この時は、解任のプロセスが不透明とする海外の機関投資家や国内の金融機関が瀬戸氏を支持。瀬戸氏が勝利し、潮田氏は追放された。

 積水ハウスで勝つのはどっちだ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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