
地図大手のゼンリン(東証1部上場)とNTTは資本業務提携することで合意した。ゼンリンの地図製作技術とNTTのデータ分析や通信技術を融合。自動運転などに必要なデジタル分野での地図の開発を加速させる。
ゼンリンはNTTに、自社保有株420万株を1株1088円、45億6900万円で割り当てる。NTTはゼンリンの創業家の資産管理会社サンワ(議決権比率9.33%)、トヨタ自動車(同7.56%)に次ぐ第3位株主(同7.44%)となる。ゼンリンにとって、大型の資本業務提携は1997年のトヨタに続くもの。NTTの呼びかけに応じ、半年足らずで合意した、とされる。
トヨタとNTTがスマートシティー(次世代都市)推進で資本業務提携することになった直後の合意。ゼンリンはトヨタが進める次世代技術を駆使した「新しい街」づくりに加わることを意味する。
トヨタは富士山のふもとに「次世代都市」づくり
米ラスベガスの世界最大のIT(情報技術)見本市「CES」に参加したトヨタの豊田章男社長は今年1月、スマートシティー(次世代都市)建設を発表した。トヨタは実証実験する地域を「コネクテッド・シティー」(つながる街)と位置付け、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を利用する。実証都市「ウーブン・シティ」の敷地面積は約71万平方メートル。21年春の着工を目指し、5年以内に人が住めるようにする計画。当初はトヨタの従業員や関係者ら約2000人の居住を見込む。
「つながる街」には、自動運転の電気自動車を走らせたり、センサーや人工知能(AI)によって住民の健康状態をチェックしたりする構想がある。この実現には新たなIT技術が必要不可欠とされる。
NTTは、この街の情報通信の基盤となる「スマートシティプラットフォーム」の構築を担う。複数の交通手段から最適な移動を利用者に提案するサービス「MaaS(マース)」や自動運転技術の根幹となる新しい地図システムが必要とされており、NTTとゼンリンは協力して高度な地図データベースを開発する。
ゼンリンとNTTが協業する「高度地理情報データベース(DB)」は、未来の「予測地図」を描くものだ。人口動態や通行量を織り込んだ街づくりを進め、環境や防災、混雑の具合をシミュレーションする。自動運転車、ドローン、作業ロボットが行き交うことになるスマートシティーでは、機械センサーや人工知能(AI)で緯度・経度や建物の高さなどを正確に判断するためのよすがとしてDBを活用する。
ゼンリンはレーザー計測車両や約1000人の調査員を使って国内の住宅地図データを作成しており、この分野でトップのシェアを持っている。商品としてはカーナビ向け電子地図データが主力となっている。NTTグループのNTT空間情報が持つ豊富なデジタル地図の制作ノウハウと掛け合わせることで、より高度な地理情報DBを完成させる。