
全国で約9000店舗と言われるパチンコ店のほぼすべてが、緊急事態宣言発令を受けて休業した。しかし、ゴールデンウイーク(GW)明けから、他業種と同様に少しずつ営業再開に舵を切った。
その裏にあった切実な事情、そして、今後パチンコ業界が迎える未来とは――前編に引き続き、大阪府の中規模店で店長を務めるKさんに話を聞いた。
閉店増加で連鎖倒産に波及する可能性も
東京都の感染拡大防止協力金の申請要件である「少なくとも4月16日から5月6日まで休業」の期間が明けた5月7日、多くの業種で営業再開の動きが出た。
「緊急事態宣言の延長は予想できたこととはいえ、『もうこれ以上は休業できない』ということ。給付金も緊急支援融資もいつ入金されるのかわからない状態で、“補償なき休業要請”には限界がありましたね。営業再開する競合店を見て、『じゃあ、うちも』という感じに……」
それでも、各自治体の遊技業協同組合は組合員に休業の継続を要請していた。
「多くのホールが、その要請に従えないことはわかっていたはず。実際、『もう足かせを外したい』ということで、GW中に大阪府遊技業協同組合(大遊協)から脱退した組合員が10件以上あったそうです」
昨秋の消費税増税や景気低迷で経営難に陥っていたところに新型コロナウイルスがとどめを刺した……そんな倒産が多くの業界で見受けられた。しかし、パチンコホールの倒産は4月と5月に1件ずつ報じられたのみだ。ほかの業種と比べて少ないように感じられるが……。
「倒産件数は、これからもっと増えるでしょうね。関連企業の連鎖倒産も心配です。それに、倒産しなくても、経営権の譲渡や閉店は4月以降で少なくとも80件以上と、かなりの影響が出ています」
休校による学校給食の停止や飲食店の休業により、食材を納品していた多くの業者が危機に瀕していることは知られている。
「パチンコ業界も一緒ですよ。ホールが閉店すれば、従業員が生活に困るだけでなく、新台の流通が減り、メーカーも甚大な影響を受ける。ホールに機械を運ぶ運送業、ワゴンスタッフなどを派遣する事業者、宣伝広告業、お菓子や飲料を卸す業者なども無傷では済みません」
特に4月からの改正健康増進法の全面施行により、禁煙ルーム設置などの設備投資を行ったパチンコ店は、1日も早い営業再開が必要だった。
「まぁ、そのおかげで『空気がきれいですよ』とか『空調に気をつかってますよ』と言えるのは、結果オーライかもしれません」
「旧規則機の入れ替え問題」が追い打ちに?
今年、多くのパチンコ店が懸念を抱いていたのは、前述の「禁煙対策」、そして「東京オリンピック期間中の新台入れ替え自粛」と「2021年1月末に向けた旧規則機の入れ替え」である。五輪問題は先送りされ、旧規則機の入れ替え問題については“1年の猶予”という朗報が届いたが、事はそう単純ではないらしい。
「すべての旧規則機の設置期間が1年間延びて2022年1月末までになるわけではありません」
現在、設置台数や稼動の面でずば抜けているのが、パチンコは「CR真・北斗無双」、スロットは「ミリオンゴッド-神々の凱旋-」。後者は11月に撤去しなければいけないのだが、それに代わる人気台が見当たらず、パチンコ店は売り上げや稼動が減少する危機にある。