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コロワイド、大戸屋の買収失敗…大戸屋は売上5割減で経営危機、社長信任率が異例の低さ

文=編集部
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大戸屋の店舗(「Wikipedia」より/Asanagi)

 定食チェーン「大戸屋ごはん処」を運営する大戸屋ホールディングス(HD)は6月25日、東京都庁にほど近いハイアットリージェンシー東京で定時株主総会を開催した。

 約19%の株式を保有し筆頭株主である外食大手コロワイドが買収を視野に取締役会の刷新を目指す株主提案をし、これに反発する大戸屋HDとの対立で注目された。ところが、完全な肩透かしに終わったのはなぜか。コロワイド側から出席したのはたった1人。株主提案していながら、株主提案の説明もない。しかも、株主提案に賛同の拍手すらしなかった。前代未聞の珍事である。

 その結果、コロワイドが株主提案していた取締役候補は否決。大戸屋HDが出した現経営陣を中心とした役員案を可決した。人手不足や新型コロナウイルスの流行によって業績が落ち込み、先が見えない経営環境下、窪田健一社長(49)らが引き続き再建を指揮する。

創業家の御曹司の賛成率はわずか13.96%

 大戸屋HDが関東財務局に提出した臨時報告書によると、窪田社長の賛成比率は62.00%。その他の取締役もすべて60%台の賛成比率だった。コロワイド以外のかなりの株主が反対票を投じたということだ。薄氷を踏む勝利だった。

 株主提案のうち、コロワイドの蔵人金男会長(72)の長男、蔵人賢樹専務(41)と澄川浩太取締役(41)の賛成比率はともに15.50%。大戸屋HD創業者の三森久実氏の長男・智仁氏(31)にどの程度の賛成が集まるかが最大の関心事だったが、それはわずか13.96%。全取締役中最低だった。大戸屋HDの株主は御曹司の復帰にノーを突きつけた。

 そもそもの発端は、2015年7月、大戸屋HDを実質的に創業した三森久実会長(当時)が57歳で死去したこと。経営権をめぐり、久実氏の従兄弟にあたる窪田社長ら経営陣と、久実氏の妻・三枝子氏と息子で常務だった智仁氏が対立した。16年、智仁氏が大戸屋HDを去り、17年、会社側が久実氏の功労金として創業家に2億円を支払ったことで、お家騒動は落着したかに見えた。

 ところが昨年10月、創業家は保有していた株式18.67%をコロワイドに30億円で売却した。コロワイドは「手作り居酒屋 甘太郎」「牛角」「かっぱ寿司」「ステーキ宮」「フレッシュネスバーガー」など外食チェーンを運営する会社だ。大戸屋HDの株式を手に入れ筆頭株主になったコロワイドは買収を提案したが、大戸屋HDがこれを拒否したため、強硬手段に訴えた。コロワイドは経営陣の刷新を目指す株主提案を公表。経営陣を刷新できれば、TOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資の組み合わせで持ち株比率を50%強に高め、連結子会社にする考えだった。

 個人株主には創業者の久実氏のファンが多い。久実氏の長男・智仁氏を取締役候補に据えることで「創業家がコロワイドを支持している」とアピールした。だが、これが逆効果。会社を辞め、持ち株をコロワイドに売り払った張本人が、経営への返り咲きを狙っていると受け止められ、猛反発を招いた。

コロワイドの野尻公平社長(58)は『大戸屋HDの株主総会にはオレが行く』と言っていたそうだが、智仁氏のあまりの悪評に、勝ち目なしと判断し総会を欠席した」(関係者)

 しかも、コロワイド側の出席者はたった1人。コロワイドは事前に議決権を行使していた。だが、コロワイド側から出席者がいれば、事前の議決権行使よりも会場での意志表示が優先される。コロワイドの社員は株主提案に賛成の意志を示す拍手をしなかった。会場にはコロワイド側の申し立てにより中立公正の立場でチェックする総会検査役が控えていた。検査役は「コロワイド側の出席者が拍手をしていなかった」と確認した。

 このため、コロワイドが持つ議決権数は賛成にも反対にも棄権にもカウントされなかった。持ち株比率は19%だが、株主提案への賛成比率は他の株主分の15%内外にとどまった。コロワイドの票を加算しても34%程度で過半数にも届かないが、これほどの惨敗にはならなかった。

コロナ禍で大戸屋HDは壊滅的な打撃を被る

 大戸屋HDの窪田社長は株主総会は乗り切ったが、正念場はこれからだ。コロワイドの野尻社長は決して諦めない。再び臨時株主総会の開催を請求し、経営陣刷新を求めるか、敵対的TOBを始める方針とみられている。新型コロナウイルスの流行により最も打撃を受けた業種の1つが外食だ。大戸屋HDは業績が悪化しているところに、コロナがもたらした外出自粛の追い討ちを受けた。

 20年3月期の連結売上は前期比4.5%減の245億円、最終損益は11億円の赤字(19年3月期は0.5億円の黒字)。コロナが直撃した1~3月期の最終損益(9.5億円の赤字)が通期の赤字のほとんどを占めた。既存店売上高は4月が48.4%減、5月が40.4%減と記録的な落ち込みぶりだ。夏場以降、回復するにしても赤字の拡大は避けられない。経営は崖っぷちに立たされているといっていい。

 攻める側のコロワイドもコロナで大苦戦していることに変わりはないが企業規模が違う。20年3月期連結決算(国際会計基準)の売上高にあたる売上収益は前期比3.7%減の2353億円。大戸屋の10倍弱だ。最終損益は69億円の赤字(同12億円の黒字)。コロナ禍の1~3月期の最終損益は77億円の赤字だった。それでも現金及び現金同等物の3月期末残高は322億円と潤沢だ。

 株式市場では、「コロワイドが敵対的TOBを断行する可能性は高い」とみる。株主総会で経営陣に賛成票を投じた個人株主も、コロワイドのTOB価格次第で持ち株を売ることもあり得る。業績悪化と敵対的TOBの挟み撃ち。大戸屋の窪田社長は眠れない夏の夜を過ごすことになる。

(文=編集部)

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