NEW
小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

待ち受ける「コロナ対応で発生した債務処理」と「財政健全化」という2つの難題

文=小黒一正/法政大学教授
【この記事のキーワード】

, ,

待ち受ける「コロナ対応で発生した債務処理」と「財政健全化」という2つの難題の画像1
6月22日の経済財政諮問会議(「首相官邸 HP」より)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、日本を含む世界の社会活動や経済活動に大きな影響を及ぼしている。この問題がいつ終息するかは現時点ではわからないが、数年経てば、いずれ終息するはずだ。人口減少・少子高齢化が進むなかで、そのとき、日本はコロナ以前に抱えていた課題に再び直面する。その課題とは、財政・社会保障の改革である。

 いまは厳しい状況にあるが、将来世代や若い世代にツケを残さぬよう、改革に向けて準備を進めておくべきことが2つある。一つは「財政健全化」目標の堅持、もう一つはコロナ危機対応で発生した債務処理の方法だが、順番に説明しよう。

「財政健全化」目標の堅持

 まず第1の「財政健全化」目標の堅持だ。コロナ禍の下でも、人口減少・少子高齢化は進んでおり、団塊の世代が75歳以上となる2025年問題もあり、社会保障の改革はこれからが正念場である。

 であるならば、政府は改革を放棄してはならず、政治的な意思を示す必要がある。改革の象徴の一つは、政府の財政健全化目標であり、それは「骨太の方針」(正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」)において、国と地方を合わせた基礎的財政収支(以下「PB」という)を2025年度に黒字化するという目標として記載されている。

 この点で重要なのは、7月中旬頃に閣議決定を予定する「骨太の方針2020」において、財政健全化の目標が残るか否かであろう。

待ち受ける「コロナ対応で発生した債務処理」と「財政健全化」という2つの難題の画像2
(出所)財務省資料および内閣府SNAデータから作成

 いずれ財政健全化が必要となるのは、コロナ危機に対応するための大規模な財政出動のほか、税収の動きからも明らかだ。例えば、当初予算において、政府は2019年度の税収を約62.5兆円と見積もっていたが、新型コロナの影響で、2年ぶりに60兆円を割り込む見通しだ。収入が急減した中小企業などに今年5月から1年間、法人税や所得税などの納税猶予も認めており、2020年度も税収は落ち込む可能性が高い。

 2020年度における税収の落ち込みがどの程度か、現時点で正確な予測は難しいが、2008年のリーマンショックでは、国の一般会計における決算の税収は、当初予算の税収見積もりと比較して、17.3%も減少した。今回のコロナ危機は、リーマンショック以上であることが明らかなため、税収の減少は17%超となるのは確実であり、その分、さらに財政赤字は拡大して公的債務は累増する。

 これは、コロナ危機が終息した後に求められる、財政健全化のハードルを一層押し上げることを意味する。改革の旗印を一度下ろすと、もう一度掲げるのは、なかなか容易ではない。コロナ危機に直面する今、財政・社会保障の改革を早急に進める必要はないが、骨太の方針において、財政健全化の目標はしっかり残す必要がある。

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ