アパートの施工不良問題で経営再建中の賃貸住宅大手レオパレス21は7月22日、都内で株主総会を開いた。一部のオーナーから怒号が飛ぶ場面があったが、社外取締役の数を増やすことを決めた9人の取締役の選任など3つの議案を賛成多数で可決した。宮尾文也社長の賛成比率は88.97%だった。
3月期決算時点での筆頭株主は国内運用会社のアルデシアインベストメント(保有比率18.36%)、2位は旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス(8.95%)、3位は同じくエスグラントコーポレーション(6.43%)だった。
6月4日、大株主の村上世彰氏が「数百億円規模の増資を引き受ける」と報じたことから、レオパレス株は一時、前日比34円(14.4%)高の270円まで値上がりした。ところが実際は、レノなど旧村上ファンド系投資会社3社は共同保有するレオパレス株を売却していた。レノが関東財務局に提出した変更報告書によると、6月30日時点の保有割合は12.08%。レノは6月24日、6月26日にも変更報告書を提出し、3度の売却で持ち株比率は4.69ポイント低下した。
レノらのレオパレス株売却が次々と明らかになると株価は下落。7月31日、年初来安値の150円をつけた。年初来高値の423円(2月21日)から64%下落した。
債務超過が目前か
株主総会を乗り切ったとはいえ、難問は山積している。2018年春から施工不良が次々に発覚し、入居率が急落するなか、外国人入居者がレオパレスの命綱になっていた。外国人入居者(個人契約)は3月末で2万3000人。5年間で1万人近く増えた。個人契約に占める外国人の比率は11%を超えている。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で外国人留学生の入国がストップした。この影響もあり、5、6月は2カ月連続で入居率が損益分岐点の80%を下回った。サブリースを手がけるレオパレスは入居者から受け取る賃料よりも、物件オーナーに支払う金額が大きい逆ざやの状態にあり、キャッシュがどんどん流出していく。
21年3月期の連結最終損益は80億円の赤字(20年同期は802億円の赤字)になる見通しだ。業績の立て直しに向けて構造改革を進める。6月5日、社員の15%にあたる1000人規模の希望退職を募集、名古屋やグアムにあるホテルなどを売却すると発表した。売却するのは名古屋市の「ホテルレオパレス名古屋」と、各地にある賃貸住宅17棟で売却先は非公開。9月末までに譲渡する。帳簿価格を下回るため、20年4~6月決算に36億円の減損損失を計上する。8月7日に予定していた4~6月期の発表を9月11日に延期した。
資本増強が今後の焦点となる。20年3月期末の連結自己資本比率は0.7%に急降下した。4~6月期に債務超過に転落することは避けられないとみられている。さらに施工不良物件の改修工事費である「補修工事関連引当金」が560億円計上されている。今後、これだけの支払いが必要になるということだ。
現金及び現金同等物の3月末の残高は605億円あるが、改修工事費を賄うためには、増資に応じてくれるスポンサー探しが欠かせない。
ヤマダ電機は救世主になるのか
「週刊文春」(文藝春秋/6月25日号)は「債務超過寸前のレオパレス21 救世主は『ヤマダ電機』 メリットはあるか?」という記事を掲載した。ヤマダといえばコロナ危機下で思わぬ追い風が吹いた。10万円の特別定額給付金の効果や外出自粛の反動で「リベンジ消費」の動きがみられた。夏物商戦の主役は家電だ。ヤマダはリベンジ消費の恩恵を受ける。
ヤマダは、家電に依存しない戦略を打ち出し、住宅、不動産、金融に進出した。住宅メーカーのエスバイエル(現・ヤマダホームズ)を買収、住宅リフォームのナカヤマを吸収合併した。17年に家電、生活雑貨や家具からリフォームまで、住まい一式を揃えた新業態「家電住まいる館」を開始。賃貸や不動産仲介を行うヤマダ不動産も設立した。
「文春」には「昨年12月に買収した大塚家具に続き、レオパレスと組むことで家具・家電つきのアパートを提供するなど、相乗効果が見込める」という金融機関幹部の見立てが掲載されている。大塚家具の再建に全力をあげているヤマダが、債務超過確実のレオパレスを買収するのか。「もしそんなことをしたら、両足を泥沼にとられてヤマダそのものの経営が危うくなる」(業界関係者)。
レオパレスは民事再生法を申し立て、新しいスポンサーを迎えるしか再生の道はないという見方も強い。
(文=編集部)