
コンビニ業界で大転換期が起きている。新型コロナウイルスの影響もあり、ファミリーマートの売上高の減少率が大きくなり、ローソンの後塵を拝しているというのだ。さらに、ローソンはかつてファミマが行っていた無印良品との提携やスイーツの開発力などで評価を高めており、今後もファミマを大きく突き放すとみられる。
ファミマ失速の理由とコンビニ業界の展望について、コンビニ研究家の田矢信二氏に聞いた。
コロナ禍で最も打撃を受けたファミマ
コロナの影響はコンビニ大手3社にも広がり、7月の既存店の売り上げはいずれも前年同月を下回っている。その減少率は、セブン-イレブン5.1%、ファミマ10.8%、ローソン8.9%となっており、売上高や店舗数で業界2位のファミマが3位のローソンより打撃を受けている。
ちなみに、3月から7月の期間を合わせても、ファミマの減少率は3社の中で最下位だった。10月に発表されたファミマの2020年3~8月期の連結決算では、最終損益が107億円の赤字(前年同期は381億円の黒字)だったことも苦しい現状を表している。コンビニ業界に精通する田矢氏は、現在の勢力図についてこう語る。
「店舗数と売上高を見ると、セブンが独走しています。ローソンは長らく業界2位でしたが、18年11月にファミマがサークルKサンクスと経営統合し、店舗数と売上高で2位に浮上。ローソンは3位に転落しました」(田矢氏)
今年7月時点のデータによると、店舗数はセブンが2万884、ファミマが1万6626、ローソンが1万4491となっている。ただし、田矢氏によると「ファミマの店舗数は、経営統合直後から600ほど減っている」という。この店舗数の減少が、ファミマの失速に影響を与えているようだ。
投資と損失のダブルパンチで魅力消失の危機
コンビニの平均日販(1日の売り上げ)は約50万円と言われるが、ファミマのように600店舗がなくなると、単純計算で年間約1100億円の損失となる。
「統合時に関係する投資も含めると、約1500億円は費やしているのではないでしょうか。そして、投資と損失がかさみ、商品の開発やプロモーションに十分なコストをかけられていないように見えます。また、ファミマは時短営業の店舗を増やす方針を打ち出しているので、その分売り上げも減少していると思われます」(同)
確かに、ファミマは「ファミチキ先輩」や「FamiPay」など他社にはないサービスを行ってきたが、今年は目新しいサービスや商品が見受けられない。
「セブンはコロナ禍でも毎週驚くほど新商品を出し、販促もしています。セブンアプリも、無料の引換券が高確率で当たるなどのキャンペーンで消費者を包み込み、同業他社をさらに引き離そうとしています。商品に関しても、セブンやローソンは女性向け、シニア向け、男性向けとターゲット層がはっきりしているのに対し、ファミマはそういった線引きが曖昧に見え、迷っているように感じます。他のサービスを発表しても、売り上げを上げることは厳しくなるでしょう。なぜなら、商品力は売り上げを上げるのに一番重要な基本だからです」(同)