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村井英一「お金の健康法」

30%増も…来年1月から火災保険料と地震保険料が大幅引き上げ 保険会社間でバラツキ

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
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「Getty Images」より

 2021年の1月にほとんどの損害保険会社で、火災保険料が値上げされます。保険会社や地域によってバラツキがありますが、平均して6~8%引き上げられると見られています。さらに、地震保険料も値上げとなります。こちらも地域によって違いはありますが、平均で5.1%引き上げられる予定です。地震保険は各社共通ですので、一斉値上げとなります。

火災保険

 生命保険も損害保険も同じですが、保険で支払われる保険金は、加入者から集める保険料で賄っています。支払う保険金が増えると、それに応じて保険料を値上げしなければなりません。

 地球温暖化の影響でしょうか。近年、台風や集中豪雨などによる自然災害が増えています。それによって火災保険による保険金の支払いも増えています。火災保険の保険金の支払いは、火災によるものよりも自然災害によるもののほうが圧倒的に多く、自然災害の増加は保険の収支に影響します。特に、2018年の台風21号、19年の台風15号、19号は都市部を襲ったこともあり、保険金の支払いが急増しました。保険金の支払いが急増すると、その実績を受けて、数年後に保険料が値上げされます。

 火災保険の保険料は保険会社によって異なりますが、実はその“基となっている保険料”は各社同じなのです。生命保険の場合は、それぞれの保険会社で保険金を支払うことになる原因(死亡や病気)の発生率を調べ、各社が独自に保険料率を算出します。それに対して、損害保険の場合は「損害保険料率算出機構」という組織があり、そこで火災保険や自動車保険の“基となっている保険料”を決めています。損害保険会社はそこに、自社の経費や利益にあたる部分を上乗せして保険料を決めています。

“基となっている保険料”が引き上げられると、それに応じて各保険会社も保険料を値上げします。同機構では“基となっている保険料”のことを「参考純率」と言っています。近年の自然災害の増加の影響で、18年に参考純率が引き上げられました。それを受けて翌19年10月に各保険会社が値上げをしています。さらに18年の保険金支払いの急増を受けて、機構は19年にも参考純率を引き上げました。それを受けた保険料の値上げが、21年の1月に行われるわけです。

 参考純率は都道府県ごとに決めています。災害が多かった地域は引き上げ幅が大きくなります。6~8%というのはあくまで平均のことで、参考純率が30%以上も引き上げられる地域もあり、保険の更新の際に驚くことになるかもしれません。それでも、この算出にはまだ19年の台風による保険金支払いは反映されていません。将来的にはさらなる引き上げも覚悟しなければなりません。

 もっとも「参考」という言葉が示すように、この通りに値上げしなければならないわけではありません。1月の値上げでも、都道府県単位で一律の保険料とすることをやめ、ハザードマップ(災害危険予測地図)を活用して、その土地のリスクに応じた保険料を適用するという保険会社も現れました。

地震保険

 21年1月は地震保険も値上げされます。地震保険は、保険会社と国が共同で運営しているため、保険料は各社共通です。しかし都道府県によって異なり、こちらも同機構が算出しています。

 東日本大震災による保険金支払いが大きく、保険料を大幅に引き上げる必要がありました。しかし、急な大幅値上げはできないということで、3回に分けて引上げがさされました。その3回目の値上げが21年の1月に実施されます。平均で5.1%の引上げですが、これも地域差があります。なお、3回の値上げでも計算上必要な値上げ幅には足りていません。こちらも将来的にさらなる値上げが見込まれます。

 一方、同じ損害保険でも自動車保険や自賠責保険は、ここ数年値下げされています。こちらも同機構が参考純率を算出していますが、交通事故の減少で保険金支払いが減少しているためです。交通事故傷害保険やファミリー交通傷害保険も同様です。

 このように自動車関連の保険の値下げと住宅関連の値上げが続いています。すると、損害保険料率算出機構が算出する参考純率を離れて、独自の保険料を設定する動きは今後も続いていくことでしょう。これからの火災保険は、保険会社による違いが大きくなると思われます。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

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