NEW
藤和彦「日本と世界の先を読む」

中国、国有企業“安全神話”崩壊…デフォルト多発、リーマンショック級金融危機の兆候

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
【この記事のキーワード】

, ,

中国、国有企業“安全神話”崩壊…デフォルト多発、リーマンショック級金融危機の兆候の画像1
「Getty Images」より

 中国の李克強首相は11月18日、共産党機関紙・人民日報への寄稿で「中国経済は今年プラス成長を確保し、経済規模が約1590兆円を超える見込みである。中国経済は急成長の段階から質の高い発展段階に入った」との見解を示した。世界がリセッションに陥り、新型コロナウイルス感染再拡大への対応を余儀なくされているなかで、自国の安定ぶりを強調し、国内経済に自信を示したが、これに呼応するかたちで中国人民元も対ドルで上昇、2年ぶりの高値を付けている。

 順風満帆に見える中国経済だが、足元で「不都合な真実」が露呈し始めている。

 中国人民元が対ドルで上昇している理由として長期金利の上昇が挙げられるが、中国の国債価格は下落傾向を強めている。中国の10年物国債価格は今年11月まで7カ月連続で下げており、この傾向は年内は続くと見込まれているが、その背景には国内の社債市場の動揺がある。

 中国当局が景気回復を受けて金融政策の引き締めに転じようとするなかで、国内の銀行が、最近の相次ぐ社債デフォルトや「年末までの2カ月で約94.5兆円規模の流動性は不足する」という課題に直面していることから、最も流動性が高い国債を売って資金確保に動く可能性が高いとされているからである。

 中国ではこのところ、国有企業が発行する社債がデフォルトする事案が相次いでいる。ドイツ自動車大手BMWの合弁会社の親会社である華晨汽車集団の社債が10月末に、国有石炭企業の永城煤電控股集団の社債が11月10日にデフォルトした。永城煤電控股集団の社債の場合、AAAの格付けを取得していたのにもかかわらず、発行後1カ月足らずで元本と利息の支払いができない状態となってしまった。

 中国政府が力を入れている半導体分野でも、同様の問題が起きつつある。清華大学が出資する国有半導体メーカーである清華紫光集団の社債価格が11月に入り、格付け会社から「債務返済をめぐるリスクがある」と指摘されたことで急落した。「国有企業の社債には地方政府の暗黙の保証がついている」とみなされてきたことから、利回りに妙味を見出していた銀行などが積極的に購入してきたが、相次ぐデフォルトの発生でその信用が揺らぎ、社債の保有を減らす動きが強まっている。

中国金融史上の不祥事

 中国銀行保険監督管理委員会は、「国有企業は安全な投資先である」という神話が崩壊して社債市場全体に信用不安が広がっていることについてコメントを出していないが、中国人民銀行は11月16日、中期貸出制度(MLF)を通じて約12.7兆円という巨額の資金を市場に供給した。

関連記事