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空港、コロナ地獄…中部国際空港は国際線客99%減、民営化の関空は国が全面支援で逆戻り

文=編集部
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関西国際空港(「Wikipedia」より)

 格安航空会社(LCC)のエアアジア・ジャパン(愛知県常滑市)は11月17日、東京地方裁判所に破産手続き開始を申し立てた。保全管理人の上野保弁護士によると負債総額は約217億円。少なくとも2万3000人以上、金額ベースで5億円強のチケットの返金の見通しがたっていないという。新型コロナウイルス禍での国内の航空会社の経営破綻は初めてである。

 エアアジア・ジャパンは12月5日付で全路線を廃止すると10月に発表していた。会田純COO(最高執行責任者)は「事業を継続することは極めて困難であると判断し、苦渋の決定をいたしました」とするコメントを出した。同社の親会社であるマレーシアのエアアジアは、アジア各国に路線網を持ち、世界屈指のLCCグループだが、コロナがエアアジア本体を直撃した。

 エアアジアの日本からの撤退は今回で2度目だ。2011年、全日本空輸(現ANAホールディングス)と合弁で日本に参入。しかし、経営方針をめぐってANAとの間ですれ違いが生じ、搭乗率も低迷。13年に提携を解消し、日本から撤退した。

 第2期のエアアジア・ジャパンは、エアアジア(出資比率33%)、楽天、基礎化粧品のノエビアホールディングス、スポーツ専門店のアルペン(3社とも同18%)などの出資を受けて14年に設立した。就航は当初計画より大幅に遅れて17年10月となった。拠点空港は、他のLCCと競合が少ない中部国際空港にした。機材はエアバスA320型機が3機。国内線は新千歳と仙台、国際線は台北の3路線を運航し、20年8月に福岡線を開設した。

 19年12月期の売上高は約40億円、最終損益は約47億円の赤字だった。規模を拡大して採算ベースに達する前にコロナによる需要低迷に直面した。春先から各路線が運休となり、6月には社員約300人の23%にあたる70人弱の希望退職を実施した。親会社のエアアジアグループは20年7~9月期決算で最終損益が210億円の赤字となり、債務超過に転落した。本体の経営が危うくなり、2度目の日本からの撤退を決断した。

中部空港はLCC専用の第2ターミナルを開業したばかり

 エアアジア・ジャパンの破産で、LCC向けに開業したばかりの中部国際空港(愛知県常滑市)の第2ターミナルが苦境に立たされた。LCCによる成長路線を描いていた中部空港にとって、先の見通せない大きな痛手となった。中部国際空港セントレアを運営する中部国際空港は19年9月、搭乗橋などがない簡素な造りにして、航空会社の費用負担が少ないLCC向けの第2ターミナルを開業。もっとLCC路線を誘致し、空港の発展につなげるもくろみだった。

 第2ターミナルには最大で9社が乗り入れ、空港の運航本数に占めるLCCの比率はコロナ前の19年11月に国際線で20.2%、国内線で17%に上昇した。なかでも、エアアジア・ジャパンへの期待は大きかった。同社は中部空港と中国・韓国を結ぶ路線を計画していたからである。

 中部空港はインバウンド(訪日外国人)を追い風に、国際線の旅客数が6年連続で増加。20年3月期は619万人と、05年の開港以来最高を更新した。今期(21年3月期)は一転、過去にない需要減に見舞われた。21年3月期の国際線旅客数は、わずか2万人にとどまる見通し。減少率は99.7%となる。文字通り需要が消失した。国内線も73%減の170万人を見込む。

 空港経営は厳しさを増している。相次ぐ減便・運休で着陸料が入らない。空港内のショップ・レストランの臨時休業が相次ぎ、免税店や物販・飲食店の店舗売上高は20年4~9月期(上期)だけで前年同期比で95%減った。

 中部空港の21年3月期の売上高は80%減の138億円、最終損益は202億円の赤字(前期は47億円の黒字)を見込む。赤字額は05年の開港以来、最大となる。

 愛知県は中部空港を支援するため、21年2月から22年3月まで従業員を受け入れる。大村秀章知事は「県が先頭に立って地域の航空関連産業の維持、発展に尽力したい」と述べた。県は関連費用として計6000万円を充当する。

JAL系とANA系に集約

 エアアジアの倒産で国内のLCCはJAL系、ANA系に集約され、第3勢力が消滅した。成田空港を拠点とするジェットスター・ジャパンは12年7月に就航した。筆頭株主はJALで、就航当初の出資比率33.3%を19年9月末までに50.0%に引き上げた。豪航空大手カンタス航空グループが33.3%、みずほフィナンシャルグループ系の航空機リース会社、東京センチュリーが16.7%出資する。機材はエアバスA320型機(180席)が25機で、国内23路線、国内6線の計29路線を展開。国内2位のLCCとなっている。

 東京オリンピック・パラリンピックを開催する2020年を前に、ANAが傘下のLCCの再編に動いた。ピーチ・アビエーションとバニラ・エアが19年11月経営統合し、新生・ピーチが誕生した。国内LCC2位のピーチと3位のバニラが統合した結果、JAL系のジェットスター・ジャパンを抜きトップとなった。

 ピーチは11年、ANAと香港の投資会社ファーストイースタンインベストグループの合弁で設立。産業革新機構が資本参加し、12年、関西空港を拠点に運航を開始した。17年にANAが出資比率を引き上げ連結子会社にした。LCC空港に特化した関西空港を拠点に成長を遂げた。

 バニラ・エアの前身は、第1期エアアジア・ジャパンである。13年にANAとエアアジアは合弁を解消。エアアジアは保有株すべてをANAに売却した。ANAはバニラ・エアに社名を変更して再スタートを切った。

 新生・ピーチはANAが77.9%を出資した。統合後の本社は関空に置き、ブランド名をピーチに統一した。ピーチは関空、旧バニラが成田に拠点を置いており、相互補完が可能だ。中距離LCCに参入し、規模を広げ海外のLCCに対抗するシナリオを描いたが、コロナで消し飛んでしまった。

関西国際空港に政府が低利融資

 日本でLCCの路線が最も充実している空港は関西国際空港だ。12年、LCC専用ターミナルを整備したことが、LCC誘致の呼び水となった。アジア、オセアニア、ハワイまで近距離、中距離の海外LCCで気軽に行けるようになった。LCCだけで就航する航空会社は15社を超えた。

 インバウンド(訪日外国人)ブームの頃、関空はわが世の春を謳歌していた。関西国際空港など関西3空港を運営する関西エアポートの業績を便数増と免税品売り上げ増の2本柱で押し上げた。

 ところが、新型コロナで訪日客が蒸発し、すべての歯車が狂った。一方で、年370億円の運営権の支払いは続く。関西エアポートの20年4~9月期連結決算は最終損益が178億円の赤字(前年同期は225億円の黒字)。16年4月、事業開始以来、半期として初めての赤字となった。

 売上高に当たる営業収益は前年同期比78%減の266億円。航空系収入は81%減の95億円にまで落ち込んだ。免税店売り上げなども縮小し、非航空系収入も76%減の171億円にとどまった。関空では旅客の7割超がLCCを中心とする国際線だっただけに回復の見通しは立たない。

 それでも、国際博覧会(大阪・関西万博)に備え、関空の国際線の区域を広げる第1ターミナル改修は必要である。政府は関空ターミナル改修を支援するため、関空の施設を保有する新関西国際空港会社(国が100%出資)に2000億円を低利で貸し出す。コロナで民間に運営が委託された関空は、再び国家プロジェクトとなった。

(文=編集部)

【続報】

 ピーチ・アビエーションが21年2月、1カ月限定ではあるが「月額2万円」からの料金で国内全路線が乗り放題となる新しいサービスを検討しているという。サブスクリプション(定額制)が導入されるのは航空業界で国内初となる。180席を21年1月から販売する予定。購入すれば2月1日から28日までの1カ月間、約30の国内線を自由に搭乗できる。ただ、満席の場合は利用できない仕組みだ。

 ピーチは新型コロナで国際線の早期回復が見込めないことから、余った機体を国内線に転用する方針。拠点とする関西空港発の遊覧飛行も始めており、国内線活性化の第二弾がサブスクとなる。はたしてうまくいくのだろうか。

BusinessJournal編集部

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