2020年度の白物家電の国内出荷額は、前年度比6.5%増の2兆6141億円で過去最高を記録した。10万円の特別定額給付金でルームエアコン、電気冷蔵庫、電気洗濯機など大型家電が好調だったほか、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で電子レンジなど調理家電も大きく伸びた。なかでも突出して伸び率が高かったのが空気清浄機だった。営業時間を短縮した家電量販店に代わってネット販売が支持された。
【2020年度白物家電の出荷金額上位10位】
品目 出荷金額 前年度比(%)
1.ルームエアコン 8182億円 3.5%
2.電気冷蔵庫 4525億円 3.1%
3.電気洗濯機 3995億円 8.4%
4.換気扇 1278億円 3.0%
5.空気清浄機 1094億円 2.0倍
6.ジャー炊飯器 1067億円 ▲3.2%
7.電気掃除機 995億円 7.6%
8.電子レンジ 944億円 5.7%
9.IHクッキングヒーター 743億円 ▲3.9%
10.電気シェーバー 434億円 ▲13.1%
(▲はマイナス)
10万円の特別定額給付金効果で大型家電が伸びる
「1人1律10万円」の特別定額給付金が大型家電に追い風となった。ルームエアコンは在宅勤務でニーズが高まり、出荷台数は前年度比5.5%増の1009万台。年度ベースで初めて出荷台数が1000万台の大台を超えた。エアコンの出荷金額は全出荷金額の31.3%を占めた。
電気洗濯機は乾燥機能が付いたドラム式など高価格帯が人気で、洗濯乾燥機の出荷金額は10.1%増と大きく伸びた。電気洗濯機の出荷台数は487万台(5.2%増)、洗濯乾燥機は123万台(7.6%増)である。
電気冷蔵庫は401リットル以上の大型冷蔵庫の出荷金額は同4.1%増。冷蔵庫の出荷台数は392万台(1.3%増)、大型冷蔵庫は180万台(4.4%増)となった。一方で“マイナス成長”となった製品もある。外出機会が減り、身だしなみを整えるための家電は売れ行きが鈍化した。電気シェーバーの出荷台数は747万台(6.7%減)、アイロンの出荷台数は107万台(7.6%減)。ヘアドライヤーもホテルなど業務用が落ち込み出荷台数は536万台(13.1%減)だった。
空気清浄機が爆発的に売れた
【出荷金額の伸び率の高い製品群】
品目 出荷金額 前年度比(%)
1.空気清浄機 1094億円 2.0倍
2.ホットプレート 116億円 56.8%
3.加湿器 100億円 34.1%
4.トースター 147億円 22.4%
5.除湿機 214億円 16.4%
室内の環境を良くしたり生活を楽しくする家電は絶好調だった。空気清浄機の出荷台数は前年度比76.9%増の358万台となり、年度で初めて300万台を突破。過去最高の出荷数量となった。出荷金額は前年度から倍増の1094億円と初めて1000億円を突き抜けた。空気清浄機の国内市場はシャープ、パナソニック、ダイキン工業の3社で大半を占める。メーカー各社は増産に追われた。
パナソニックは生産能力を3倍に増強。ダイキンは国内生産を始めるほか、シャープも需要増に対応するため中国やタイでの増産を継続する。加湿器の出荷台数は60.3%増、出荷金額は34.1%増、除湿機も出荷台数は12.1%増。出荷金額は16.4%増だった。
自宅で食事する機会が増えたため調理家電も健闘した。ホットプレートの出荷台数は56.1%増、出荷金額は56.8%増の116億円と初めて100億円に乗せた。初もの尽くしがかなりの品目で見られるのが大きな特徴といえる。
トースターの出荷台数は14.9%増。台数増より金額の伸びのほうが大きかったのは、価格が高い高級機種がシェアを伸ばしているからだ。高級トースターブームに火をつけたのはバルミューダの「ザ・トースター」。2万円を超える価格にもかかわらず「おいしくパンが焼ける」と人気を集めた。
「黒物」も大型テレビ・ノートパソコンが売れた
テレビなど「黒物」も出荷を伸ばした。電子情報技術産業協会によると、20年度の薄型テレビの国内出荷台数は前年度比18.1%増の572万台。出荷台数は12年以来、8年ぶりの高水準となった。特に50型以上の大型テレビは38.2%増だった。巣ごもりで、家庭で映画などを観る機会が増加し、大型・高画質の製品が売れた。
ノートパソコンも在宅勤務の広がりと、小中学生に1人1台のPCやタブレット端末を配備する国の政策に後押しされ、出荷台数は前年度比56.1%増の1077万台。1000万台を超えた。テレビ、ノートパソコンとも出荷金額の発表はない。
10万円特別定額給付金とコロナ禍がもたらした「白物」「黒物」家電の特需は20年度限り、とみられている。時ならぬ家電バブルは終わりを告げ、21年度は出荷台数、出荷金額とも反動減が必至の情勢である。
(文=編集部)