「トヨタはHVを永続させる」…世界の潮流と逆行、EVシフトを“遅らせざるを得ない”事情の画像1
トヨタ・MIRAI(「Wikipedia」より)

 トヨタ自動車は6月16日、愛知県豊田市の本社で定時株主総会を開いた。総会には株主383人が出席した。2021年3月期決算はコロナ禍でも純利益が増え、株価は6月15日に上場以来初めて1万円の大台に乗った。

 豊田章男社長は2009年の社長就任以降、連結従業員数が5万人増えたことや、時価総額が20兆円増えたことを紹介。リコール問題や東日本大震災に直面したが、「危機があったから私もトヨタも生き延びた」と振り返った。

 トヨタは走行時の自動車の二酸化炭素排出削減に向け、2030年にハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の新車の世界販売を800万台にする目標を掲げている。現行の販売台数の8割程度が、いわゆる電動車に置き変わることになる。

 電動車のフルラインをそろえるトヨタの全方位戦略に対し、株主総会に出席した株主からは賛否両論が出た。「もう少しEVに経営資源をかけたほうがいいのではないか」との指摘に、開発担当の前田昌彦・執行役員最高技術責任者(CTO)はEVに不満を持つ顧客の声を例に上げつつ、「多額の投資がかかるが、デジタル化などで開発を効率化する」と説明したうえで、「選択肢を広げる活動を見守ってほしい。いろいろな選択肢をユーザーに提示するのが一番良い」と述べた。

 5月21日~23日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開かれた24時間耐久レースにトヨタは開発中の「水素エンジン車」で参戦した。レースを通じて技術の開発を加速させる狙いだ。レースは市販車を改造した車両を使い24時間でサーキットを何周できるかを競う。トヨタによると、水素だけを燃料とした水素エンジン車がレースに出場するのは世界初。

 24時間でサーキットを358周、トータル1634キロを完走した。レーサー名「モリゾウ」こと豊田社長もドライバーとして出走。「水素社会、そしてカーボンニュートラルの実現に向けた世界初の試みを、ぜひとも応援していただきたい」と語った。

 自動車業界には辛口の見方もある。

「トヨタが水素エンジン車を強調し始めたのは、FCVが失速したからにほかならない。FCVはトヨタのミライ、ホンダのクラリティ、韓国の現代自動車のネッソしかなく、年間1万台も売れていてない。ホンダはFCVの『クラリティ フューエルセル』の生産を8月に中止する。

 欧米メーカーもバスやトラック以外は撤退し、EVにシフト済み。高級車大手の独アウディは2026年以降に新たに市場に投入する新型車はすべてEVにすると6月に発表した。ガソリンやディーゼルのエンジンは25年までに開発を中止し、中国を除く全世界で33年までに搭載する車の販売を終了する」(自動車担当アナリスト)

 アウディの親会社の独フォルクスワーゲンはグループ全体で30年までに世界の新車販売に占めるEVの比率を5割に高めるが、そのなかでもアウディが先頭を切ることになる。水素エンジンは同じ水素を使っているが、FCVとは似て非なるものだ。ガソリンの代わりに水素を使うだけ。「以前、タクシーがLPガスを使っていたが、その代わりに水素と考えればいい。エンジンは現行のガソリン車を改造するだけで使え、旧来の技術でやれる」(ライバルメーカーの技術担当役員)。

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