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スズキ、崩れるインド市場の牙城、EV本格投入で挽回図る…世界での日本自動車産業の命運を左右

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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スズキ・アルト(「Wikipedia」より)

 2025年までに、スズキが電気自動車(EV)に参入することを決めた。優先度の高いターゲット市場は、同社がトップシェアを持つインド市場だ。インドで電動車の供給体制を強化することは、スズキがより多くのビジネスチャンスを手に入れるために重要だ。

 その背景には2つの要素がある。まず一つは、安全保障面でインドは米国や日本との関係を重視していることだ。近年、インドと中国の関係は悪化してきた。インドにとって、スズキの技術力を生かして自動車の電動化を進めることは経済安全保障のために重要だ。もう一つは、インド政府はEV化を進めたいが、それが容易ではない。当初2030年の完全EVシフトをインド政府は目指したが、のちに取り下げた。その背景には、電力供給などへの不安があるだろう。

 長期的視点で考えると、スズキは自動車の電動化に加えて、それに必要なインフラ整備などの面でもインドの需要を取り込む可能性がある。同社が資本提携を結んだトヨタは、社会インフラの観点から自動車のイノベーションを目指している。電動化という自動車産業のゲームチェンジが進むなか、よりスピーディーにスズキが電動車の供給体制の確立を目指す意義は大きいだろう。

足元のスズキの事業展開の評価

 2021年4~6月期、前年同期比で見た日本主要企業の業績は、製造業および海運や総合商社などを中心に回復している。それは重要なことなのだが、新型コロナウイルスの感染再拡大などの影響が深刻ななかで各社の稼ぐ力がどう変化しているかを確認するためには、2019年4~6月期と2021年4~6月期の業績を比較することも必要だ。

 その基準でスズキの業績を確認すると、2021年4~6月期の売上高は前々年の同期比で6.9%減、営業利益は同13.1%減少した。業績回復は道半ばだ。その主な要因として、2021年3月から5月にかけて、スズキにとって最重要市場であるインドで新型コロナウイルス感染が急増し、四輪車の需要が落ち込んだ。特に、5月はインド政府が工業用の酸素を医療用に提供するよう企業に指示し、スズキはそれに従って工場やサプライヤーが用いる酸素を提供した。その結果、生産ラインが一時停止した。2021年4~6月期、インドにおけるスズキでの販売台数は2019年4~6月に比べ19.7%減だった。

 その一方で、2021年4~6月期、インド市場で第2位の韓国現代自動車の販売台数の減少率は2019年4~6月比で約8.6%にとどまった。2020年のインド自動車市場でスズキのシェアは47.7%と50%を下回った。そのため、主要投資家のなかにはインド市場で現代自動車がスズキをより猛烈に追い上げ、スズキの成長が鈍化するとの懸念がある。

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