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キヤノン、世界初のSPADセンサー開発、量産へ…世界の画像処理技術に革新

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
キヤノン
キヤノン本社(「Wikipedia」より/Centpacrr)

 キヤノンが、光の粒ひとつを検知してより鮮明な画像処理を可能にする、新しいセンサー(SPADイメージセンサー、以下SPADセンサー)の量産を目指している。同社が、これまで難しいとされてきたSPADセンサーの多画素化を実現したことは画期的だ。

 キヤノンのSPADセンサーは、これまでにはなかった画像体験を可能にすることによって、画像処理のゲームチェンジャーになる可能性を持つ。SPADセンサーは光の粒の数を計測し、それを倍増させることによって暗闇でのカラー撮影などを可能にする。それはスマホカメラなどに搭載されているCMOSセンサーでは実現が難しかった。

 今後の注目点は、どのようにしてキヤノンがSPADセンサー市場での先行者利得を手に入れるかだ。国内企業に加えて、中国や米国、韓国でも画像処理センサー分野での研究開発や量産体制の強化が加速している。自動車業界でのCASEの取り組みやメタバースなど、より高機能の画像処理センサーの活用が期待される分野も増えている。キヤノンは競合企業に先駆けてより多画素のSPADセンサーなどを開発し、画像処理関連のさらなるイノベーション発揮を目指すだろう。

キヤノンが世界で初めて開発したSPADセンサー

 2020年6月、キヤノンは世界で初めてSPAD(Single Photon Avalanche Diode)に関する技術を用いて、100万画素レベルの画像処理センサーを開発したと発表した。フォトンとは光の粒(光子)を意味する。また、アバランシェ(あるいはアバランチ)は雪崩を意味する。SPADとは、光の粒一つを検出して、それを雪崩のように増幅させるダイオード(素子)と考えればよいだろう。

 今日、キヤノンなどが生産しスマホカメラなどの画像処理センサーとして使用されるCMOSセンサーでは、一定の時間内に溜まったフォトンの量を計測する。フォトンがセンサー内に貯留される際に、画像以外の不要データ(ノイズ)も混入する。そのため、画質が低下する。

 それに対して、SPADセンサーは、フォトン1個の入射をとらえる。つまり、光の数を数える。その技術を“フォトンカウンティング”と呼ぶ。理論上、SAPDセンサーでは光の数を数えるためにノイズは入りにくい。その上でSPADセンサーはとらえた光を電気的に増幅して(雪崩式に増加させ)デジタル信号に変換することによって、より鮮明な画像の出力を可能にする。

 ただ、SPADセンサーには、多画素化が難しいという課題があった。SPADセンサーはフォトンをとらえ、電気的に倍増する。センサー内で高い電圧を発生させるためには、ダイオードに絶縁破壊防止の耐圧構造を設けなければならない。そのため画素のサイズを小さくすると光を検出できる感度領域が小さくなり、とらえられる光の粒が減少するという課題があった。それが、多画素化が難しいと考えられてきた理由だ。

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