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小林敦志「自動車大激変!」

軽自動車の電動化で取り残される危機…車種削減を進めるホンダはどこへ行くのか?

文=小林敦志/フリー編集記者
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ホンダ本社(「Wikipedia」より)
ホンダ本社(「Wikipedia」より)

 前回ホンダの生産および販売終了車種が増えていることについて、消費者がトヨタへ流れる可能性も踏まえて述べた。

 ホンダの販売状況については、軽自動車に依存している点も気になるところだ。軽自動車ユーザーはステップアップ、つまり軽自動車から登録車へという乗り替えは、まず行わないとされている。軽自動車から軽自動車、つまり「N-BOX」からN-BOX へ、というパターンが延々と続くことになる。

 実際、軽自動車の販売の中でN-BOXが圧倒的な強みを見せているのは、ユーザーが他メーカー軽自動車へ流れずに、N-BOXからN-BOXへという乗り替えが目立つことが影響しているものの、あまりN-BOXばかりが売れるのは、やはり考えものではある。

 最近では“ファーストカー”としてのニーズも多い軽自動車ではあるが、“セカンドカー”ニーズも根強いものがある。もちろんN-BOXは人気車なので、たとえば「アルファード」を所有する家庭のセカンドカーといったニーズもあるが、ホンダがこのままラインナップを縮小していくと、“登録ホンダ車ユーザーのセカンドカーニーズ”というものが、ますます期待できなくなる。

 それでなくとも、ホンダの販売現場へ行くと「登録車をご検討していたお客様でも、結果的に『N-BOXでいいか』ということになるケースも多い」と悩ましく話すセールスマンによく出会うことがある。優秀な軽自動車やコンパクトカーをラインナップしてしまったがゆえに、サイズや排気量の大きい、より収益の高い新車が売れなくなってしまい、販売終了となってしまう車種が目立つのも、今のホンダの国内販売の傾向である。

業界内で注視されるホンダのゆくえ

 そのような中で、ホンダは軽自動車やコンパクトカーを軸に国内販売を展開しようと考えているのかもしれないが、肝心の軽自動車にもやや暗雲が漂っているように見える。かねてより、日産/三菱から登場が噂されていた軽自動車規格のBEV(バッテリー電気自動車)が、2022年1月開催の東京オートサロン2022でいよいよ公開される。

 また、2021年11月1日に改良を行ったダイハツ「ロッキー」/トヨタ「ライズ」で新搭載されたシリーズハイブリッド“e-SMART”を搭載したダイハツブランドの軽自動車が、2022年中にもデビューするのではないかとされている。このe-SMARTは、その先のBEV向け電動パワーユニットへつながるものとされている。

 スズキとダイハツは、すでにトヨタを中心とする商用事業プロジェクトへ参画し、軽商用車の開発で連携することとなり、これには軽商用車規格のBEVについての技術開発も含まれているとされている。当然、軽商用車だけに収まるはずはなく、軽乗用車のBEVでもスズキとダイハツは連携していくものと見られている。

 ダイハツはトヨタの完全子会社であり、スズキとトヨタは資本提携しているので、この流れに違和感はない。厳しいコスト管理が要求される軽自動車の電動化は、単一メーカーではほぼ不可能とされている。日産と三菱、ダイハツとスズキが連携する中、「ホンダはどうするんだ」というのは、自動車業界やクルマ好きの間で最近話題となっている。

 どんなに技術力があり、開発自体は単独で行えても、それを適正な価格で量産し販売していくのは、単一メーカーの独立独歩ではおよそ現実的ではないのが現状だ。

 日本国内で乗用車をラインナップする主要メーカーは8つある(トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱、スバル、ダイハツ、スズキ)。その中でトヨタと何らかの関係があるのは4社(ダイハツ、スバル、マツダ、スズキ)、そして日産と三菱はルノー傘下となる。

 ホンダはGM(ゼネラルモーターズ)との提携などはあるものの、今でも自主独立路線が色濃いものとなっている。今までなら、それを支持する人がホンダファンとしてホンダ車を愛好してくれたのだろうが、100年に一度の大変革期を迎えている自動車産業では、それを不安要素と見る人も多くなってきていることも否定できないだろう。

スズキのマイルドハイブリッド戦略

 スズキは2021年12月に新型「アルト」を発表した。軽自動車の中でも、より厳しいコスト管理が求められる車種にマイルドハイブリッドユニット搭載車をラインナップしたことは、業界内でかなり話題となっている(廉価グレードでもエネチャージ搭載エンジンとなっている)。

 スズキはアルトのほか、「スペーシア」や「ワゴンR」「ハスラー」にも、マイルドハイブリッドユニット搭載車をラインナップしている。そして、このマイルドハイブリッドの存在もあり、軽乗用車の販売は好調で、ブランド別販売台数トップのダイハツを抜き、軽乗用車販売台数のみではスズキがトップとなっている(2020暦年締め年間販売台数)。

 車名(通称名)別販売台数ではN-BOXが断トツでトップとなっているが、モデルが古くなってきたこともあり、往時の勢いはない。スズキ系ディーラーで聞くと、「マイルドハイブリッドを選んでも燃費性能は大きく改善しない」とは言われるものの、ハイブリッドという“おまじない”は確実に販売に効いており、スズキのマイルドハイブリッド戦略がダイハツの軽乗用車やN-BOXの販売台数に影響を与えていると、筆者は考えている。

 ホンダの一連の車種ラインナップ整理は、当然ながら“自社の明るい未来”のために、という判断で進められているのだろうが、ここまで矢継ぎ早に行われると、「どこまで減らす気なのか」と消費者に不安を与え、ホンダ車の買い控えを招きかねないようにも見える。

 また、メインの軽自動車販売でも、ホンダなら真っ先に進めてもいい電動ユニットについては、マイルドハイブリッドすらその動きが見えない。日本の車両電動化は軽自動車から本格的に動き出しそうな中で、取り残されているようにも見えてしまう。

 車種削減発表だけでなく、具体的な将来へのメッセージというものも、もっと積極的に発信を行い、消費者に不安だけを与えるのではなく、その真意をもっとアピールすべきと考える。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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