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小林敦志「自動車大激変!」

相次ぐ生産終了で消費者の“ホンダ離れ”加速→トヨタへ流出か…N-BOX依存の現実

文=小林敦志/フリー編集記者
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ホンダ「N-BOX」(「Honda公式サイト」より)
ホンダ「N-BOX」(「Honda公式サイト」より)

 2021年12月22日に、ホンダが「インサイト」「CR-V」「シャトル」の国内生産と販売を2022年に終了するとの報道が相次いだ。

 ホンダのウェブサイト上に掲載されているラインナップ車種を数えてみると、車名でのカウントでは18車種となった。今回報道された3車種以外にも、2022年中など、時期に多少違いはあるが、すでに「オデッセイ」「NSX」「S660」「レジェンド」の生産終了も報道されており(オデッセイ、レジェンドは2021年中に生産終了と報道されていた)、それらを差し引くと11車種に減ることになる。

 調べてみると、1990年代には20車種ほどラインナップされていたので、半分近くまで減ってしまうことになる。ただ、メイン市場となるアメリカでも車名でのカウントで10車種ほどとなるので、ラインナップ数では目立って少ないというわけでもなさそうだ。

 1990年代前半は、国内販売ではプリモ、ベルノ、クリオの3つの販売チャネルがあり、たとえば「アコード」には「アスコット」が、「アコードインスパイア」には「ビガー」といった兄弟車が、チャネルごとの専売車として設定され多品種構成をとっていたが、今は“ホンダカーズ”に統一しているので、1990年代前半ほど多品種である必要はないものの、それでも生産終了車の相次ぐ発表は寂しい限りである。

 残留予定のラインナップの中で、グローバルレベルでメジャーな車種といえば「シビック」と「アコード」くらいしかないが、アメリカや中国などに比べれば販売台数は極めて少ないのが現状。特に海外市場では“ドル箱”車となるCR-Vが国内ラインナップから消えるという発表は、かなりインパクトが強い。

 トヨタでは、やはり世界市場でドル箱車となる「RAV4」が日本市場でもヒットモデルとしてよく売れているのとは、かなり対照的である。ただ、グローバルモデルが日本国内では売れ行きがあまり良くない、またはラインナップされないといった傾向はホンダに限ったことではないが、1990年代前期あたりにホンダでよく売れていたのはグローバルモデルが多く、消費者もホンダのそのような“インターナショナルな”または当時世界一の市場であったアメリカ市場で“人気の高いホンダブランド”というイメージを支持していた頃と今とでは、環境がずいぶん異なっているようだ。

 筆者のような“オジさんクルマ好き”の間では、今では集まれば「自分たちの若い頃のホンダ車は輝いていた」と愚痴をこぼすことが多くなっている。

N-BOXに支えられているホンダの販売状況

 過去5年間の、トヨタ、日産、ホンダの暦年締め年間販売台数の推移をグラフにしてみたが、良い傾向なのか悪い傾向なのかは別として、総販売台数はいずれもほぼ横ばいの状況となっている。

相次ぐ生産終了で消費者の“ホンダ離れ”加速→トヨタへ流出か…N-BOX依存の現実の画像1

 ただ、ホンダは軽自動車の販売比率の高まりが目立っている。2018年までは登録車の割合の方が多かったのだが、2019年からは逆転して軽自動車の販売台数が登録車を上回っているのである。ちなみに、2011暦年締め年間販売台数における軽自動車販売比率は約24%なのだが、2020暦年締めでは、なんと約52%になっている。

相次ぐ生産終了で消費者の“ホンダ離れ”加速→トヨタへ流出か…N-BOX依存の現実の画像2

 わかりやすくいえば、今のホンダは軽自動車なくして国内販売が成り立たなくなっているといっていい。しかも、ホンダの軽乗用車販売台数における「N-BOX」の販売比率は約71%となっている。つまり、ホンダは軽自動車ではなく、N-BOXに支えられているといってもいい状況となっている。

 生産工場であった狭山工場が閉鎖され、そのまま生産移管されずに生産終了というモデルもあるが、メーカーとしては「N-BOX、ヴェゼル、フリード、ステップワゴンぐらいが国内で売れていればいい」というわけではないだろうが、外野から見れば、かつて「日本国内では軽自動車、ノート、セレナぐらいが売れていればいい」と、そこに特化した国内販売を進めるようになったとされる日産と同じような動きに見えてしまう。

 ホンダの最近のラインナップにおける“選択と集中”のような動きが目立つ傾向は、まず生産終了車種ユーザーの“ホンダ離れ”を加速させるのは間違いないだろう。

 少ないとはいえ、レジェンドやインサイトなど生産終了予定車種には、歴代モデルに遡りユーザーが存在する。しかし、そのようなユーザーが新車に乗り替えようと考えても、ホンダ車の選択肢が軽自動車やコンパクトカー、ミニバンぐらいしかなければ、乗っているクルマと同クラス車をラインナップし、底堅く販売しているトヨタへ流れるだろう。「欲しいクルマがない」とお客に言われれば、セールスマンも引き留めることは難しい。

 売る側にとっても、ラインナップ減少は悩みの種となる。たとえば、レジェンドユーザーが「もう大きいクルマはいいや」と新車への乗り替えを検討すれば、以前は「インサイトはいかがですか?」とアプローチすることができた。アコードではボディサイズはほぼ同じだし、シビックはガソリン車しかないからである。

 しかし、これからは「フィットのe:HEVはいかがですか?」となる。人気のSUVへのシフトを促すとしても、CR-Vがなくなる今では、「ヴェゼル」では少々力不足である。それでも、ダウンサイズして乗り替えるトレンドは定着しているし、「フィット」への乗り替えを決断するユーザーもいるだろうが……。

 しかし、「それなら」と「プリウス」や「カローラセダン」のハイブリッドへ乗り替える人も出てきてもおかしくない。あくまでも可能性の話になるし、セールスマンの腕次第ということになるのだが、ラインナップを減らすということは、他メーカーへお客が流れやすくなるということでもある。「しょせん、そんなケースはごく一部だ」とタカをくくれば多方面へ悪影響を及ぼすことにもつながり、決して良いことには結びつかないと考えるが、いかがだろうか。

ホンダとトヨタの“安定感”の差

 また、生産終了がここまで短期間で数多く行われると、「ホンダのクルマは生産終了リスクが高い」と見る消費者がホンダを避ける動きも起きかねない。

 生産および販売終了となった車種は、リセールバリューのダウンが激しくなる。最近の消費者動向は、車種選択においてリセールバリューを重視する傾向がある。今のホンダ車の中では、国内販売中断期間もあるが、1972年に初代がデビューしたシビックが2022年で40年目に突入し、最古となる。

 一方でトヨタは2022年で「クラウン」が初代デビューから67年目、「カローラ」が56年目に入る。本格乗用車生産の歴史自体、トヨタの方が長いので仕方ないのだが、クラウンやカローラは中断期間なく日本国内で販売を続けている。

 しかも、今の日本ではかなり売りにくいセダンやステーションワゴン(カローラは最近になってSUVが加わったが)を、今でもコンスタントに販売している。このあたりは目立たないものの、消費者にとってどちらが安定したブランドに映るかは、あえて語る必要もないだろう。そして、その安定感が新車販売台数にどのような影響を与えているかは、販売力の差を差し引いても、国内販売シェアを見れば明らかである。

 また、ホンダは軽自動車に依存した販売状況も気になるところだが、それについては次回に詳述したい。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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