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ソフトバンクG、幹部が次々と退社の異常事態…アーム社売却も失敗、前途に暗雲

文=Business Journal編集部
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ソフトバンクショップ(「Wikipedia」より)

 ソフトバンクグループ(SBG)のマルセロ・クラウレ副社長執行役員最高執行責任者(COO)が1月27日付で電撃的に退社した。クラウレ氏は孫正義会長兼社長の右腕として知られる存在だった。

 欧米メディアによると、クラウレ氏がスプリントの立て直しなど自身の功績を主張して最大10億ドル(約1150億円)の報酬と自ら率いる中南米向け投資ファンドの独立を求め、孫氏と衝突していたという。SBGの有価証券報告書では、クラウレ氏の21年3月期の報酬額は17億9500万円だった。

 クラウレ氏は南米ボリビアの出身。米国で起業した携帯電話販売会社を14年にSBGに売却して、グループの一員となった。同じ年にSBGが経営再建を進めていた米携帯電話大手、スプリント(現・TモバイルUS)の最高経営責任者(CEO)に就任し、業績を改善させた。その手腕が評価され、18年からSBGの副社長兼COOを務めていた。

 クラウレ氏の最大の功績は、スプリントの経営に関わり続け、孫氏の長年の目標だったTモバイルとの統合を20年に実現したことだ。だが、孫氏は17年に始めたソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に完全に軸足を移した。SBGは携帯電話会社から投資会社に変貌していく。当然の流れだが、携帯電話会社の経営のハンドリングをしてきたクラウレ氏の存在意義は低下していった。

 現在64歳の孫氏は、後継者探しを「最重要テーマ」として掲げてきた。注目されたのは、14年に招聘した米グーグル幹部だったニケシュ・アローラ氏。「海外投資事業を担ったアローラ氏が後継者」と公言し、15年3月期に165億円の役員報酬を払い、話題になった。それでも、投資家グループが「アローラ氏は報酬に見合った成果を出していない」とし、同氏を解任するよう求める書簡を送った。アローラ氏も孫氏の投資手法をたびたび「趣味的」と揶揄するなど亀裂が深まっていたといわれる。アローラ氏は2年後の16年に退任した。

 SBGは18年、3人を副社長にした。主力の新興企業向け投資ファンド担当のラジーブ・ミスラ氏、海外事業統括・中南米向け投資ファンド担当のマルセロ・クラウレ氏、投資戦略統括の佐護勝紀氏。3人が後継レースを争うとみられていた。

 佐護氏が21年3月退任して、まず脱落した。ゴールドマン・サックス証券とゆうちょ銀行でNo.2を歴任し、18年にSBGに迎えられた人物だった。中東のオイルマネーを巻き込んで10兆円ファンドを組成したSBGは投資会社に向けて邁進した。これらの投資方針は、14年にSBG入りした副社長のミスラ氏など旧ドイツ銀行の出身者が主導。投資事業を統括するはずの佐護氏の出番はなかった。そして今回、クラウレ氏が事業家としての居場所がなくなりSBGを去った。

上場株投資の運用責任者に若手を大抜擢

 アナリストたちが、孫氏の後継者として最近注目し始めたのが旧ドイツ銀行出身で40代のアクシェイ・ナヘタ氏だった。インド・ムンバイ出まれ。米マサチューセッツ工科大学で電子工学とコンピュータサイエンスの修士号を取得し、ドイツ銀行に在籍した。17年SBGに転じ孫氏の投資戦略アドバイザーとなった。

「AI革命を支援する投資会社なのに、上場会社は対象外だなんて、誰が決めたんだ。上場していようが、そうでなかろうが、私は活躍する会社に投資していく」

 孫氏は20年11月、こう宣言して、上場株式に2兆円を超す資金を投じたことを明らかにした。上場株に投資して運用するのはSBG子会社の「SBノーススター」。SBGが67%、孫氏が33%を出資。アラブ首長国連邦のアブダビを拠点に、ナヘタ氏が最高経営責任者(CEO)を務める。SBノーススターは、米ハイテク株のデリバティブ(金融派生商品)で大口ポジションを抱え「ナスダックのクジラ」と呼ばれた。だが、結果だけ見ると、上場株の投資は失敗だった。

 米ブルームバーグ(21年11月8日付)は、孫氏が「上場株投資運用子会社のSBIノーススターへの自身の出資分の損失が1500億円になっていると明らかにした」と報じた。「SBノースターによる投資は『ほぼ手じまいに近い』と述べた」という。続いてブルームバーグ(12月16日付)は、「ナヘタ氏が退社に関して協議中だ」とする関係者の話を伝えた。ナヘタ氏は、英半導体設計大手アーム社のエヌビディアへの売却交渉で陣頭指揮を任されていたほどで、孫氏からの信頼は厚かったはずだ。

アーム株の売却を断念、ナスダックへの上場にカジを切る

 SBGはアーム株をエヌビディアに最大400億ドル(当時の為替レートで約4兆2000億円)で売却する計画だったが、米連邦取引委員会(FTC)が反トラスト法(独占禁止法)に基づき差し止めを求める訴訟を起こすなど、各国の独禁当局が売却に反対してきた。このため、当初見込んでいた22年3月をメドに売却を完了することは難しくなった。

 ブルームバーグ(22年1月25日付)は、「エヌビディアが買収計画を取り下げる準備に入った」と報じた。これを受けて、1月28日の東京株式市場でSBGの株価は一時、4584円まで下げ、昨年来安値を更新した。昨年来高値は21年3月16日の1万695円だから高値の半分以下の株価に崩落したことになる。

 SBGは2月8日、アームをエヌビディアに売却する契約を解消することでエヌビディアと合意したと発表した。SBGは欧米規制当局の承認が得られる見通しが立たず売却を断念した。SBGはアーム株式を2022年度中に米ナスダック市場に上場させる方針に切り替えた。

 契約解消に伴い、SBGは12億5000万ドル(1438億円)をエヌビディアから受け取る。孫社長が2月8日の記者会見で「アームは半導体業界史上最大の上場を目指す」と語ったが、一段と厳しい局面を迎えることになる。

孫社長はどこへ向かうのか

 孫社長はどこへ向かうことになるのか。「何が起こっても、アリババという打ち出の小槌があるから大丈夫」と孫社長は豪語してきたが、そのアリババも株価が低迷し、アリババ大明神の神通力が通じなくなってきている。孫社長は新興企業に投資するSVFを立ち上げて以降、パートナーに、いくら報酬を支払うかで悩んできたとされるが、今もこの問題は解決されていないことがわかった。

 新興企業向け投資に通じる幹部ら8人が21年末までに相次いで退社した。そして年明け早々、クラウレ副社長が姿を消した。クラウレ氏の退社を契機に、「報酬に不満を持つ幹部が流出する可能性が高まっている」(SBGの関係者)と伝わる。クラウレ氏の退任はSBGの前途に大きな影を落としている。

(文=Business Journal編集部)

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