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あの“高成長企業”、創業者が急死→不正会計発覚で新興企業株価が一斉に暴落

文=Business Journal編集部
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「Getty images」より

 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグCEOは21年11月、社名をメタに変更。コミュニケーションや仕事、エンターテインメントに空想空間を使うメタバース事業を経営の柱にすると表明した。

“メタショック”が22年2月3日、米国市場を襲った。メタの決算が期待外れの内容となり、投資家がリスク回避に動いた結果、メタ株はたった1日で26%も大暴落。2300億ドル(26兆円)分の時価総額が失われた。

 メタ株の暴落が、NY市場で「ハイテク株全体がバブル化しているのか」が真剣に議論されるきっかけとなった。メタショックは日本にも飛び火、ハイテク株の比率の高い東証マザーズの株価の下落が止まらない。東証マザーズ指数は年初から2月中旬までに30%近い下げを演じた。

 ハイテク株下落の最大の要因は、米国がインフレを抑えるために利上げなどの金融引締めのペースを速めるとの見方が強まったことだ。だが、それだけでは日本のマザーズの極端な不振は説明できない。「マザーズに上場する企業の実力不足」を指摘する市場関係者が多い。「世界的な金融緩和の金余りで、将来への期待感だけでリスクマネーが集まり、異常な高値になった銘柄が多かった」(新興市場の動向に詳しいアナリスト)。その反動がきついのは当然の成り行きである。熱狂から醒めて個人投資家が正常な投資感覚を取り戻しつつある証拠なのかもしれない。

グレイステクノロジー上場廃止のインパクト

 グレイステクノロジーの上場廃止が大きな影を落としている、との見方もある。不正会計が発覚した製品マニュアル制作のグレイステクノロジー(東証一部)は、2月28日に上場廃止となった。最終取引は25日に行われた。

 翻訳会社に勤めていた松村幸治氏(故人)が1984年、国内初の製品マニュアル制作会社として創業。16年、東証マザーズに上場。18年、東証一部上場に昇格した。松村氏は21年4月、急性大動脈解離で死去。松村氏の急逝で大がかりな会計の不正が発覚したことになる。

 同社は2月18日、架空売り上げ計上などの不正会計問題をめぐり、現旧取締役などの役員の責任を追及すべきかどうかを判断するための調査委員会を同日付で設けたと発表した。4人の外部弁護士が調査し、損害賠償請求などの法的措置を検討する。

 22年1月末に公表した特別調査委員会の報告書には「松村会長が急逝。架空売り上げのつっかえ棒となる現金を入金する自転車操業ができなくなった。21年3月期の単独売上高のうち55%が架空売り上げだった」と書かれている。

 技術集約型の高成長企業というイリュージョンを創り出した結果、株価は17年に1万7500円の上場来高値をつけた。5ケタの株価が18年に東証一部に昇格するテコの役割を果たしたわけだ。外国人持ち株比率は当時、46%に達していた。投資家向け説明会を頻繁に開き、株価を上げることを経営目標にした、松村氏の「バルーン(風船玉)」経営だった。投資家はグレイスにまんまと一杯食わされたことになる。

 これを機に新興企業に向ける投資家の目は一段と厳しくなった。22年の株式新規公開は第1号、第2号とも初値が公開価格を下回った。東証マザーズの22年の新規上場の第1号の訪問介護サービス、Recovery Internationalは公開価格3060円に対して初値は公開価格を13.7%下回る2640円だった。2月24日には1460円の上場来安値を形成した。あっという間に1000円以上、安くなった。

 2月4日、ジャスダックに上場した美容師求人情報サイト、セイファートは公開価格(1120円)を8%下回り1030円で初値をつけた。市場からの資金吸収額は10億円弱の小型案件だが、それでも軟調な発進となった。新興市場の関係者の間には「軽量の銘柄なら、順調に船出できるのではないか」といった淡い期待があった。2月24日、757円の上場来安値をつけた。取引日数で数え、およそ半月で30%近く値を消したことになる。

 株式新規公開の社数は2月が8社、3月が16社程度見込まれていた。今年に入り、3月10日までに株式新規公開を取りやめた企業は6社にのぼる。今後も上場を中止する銘柄が複数出てくるとみられる。4月には20社前後がリストアップされ、宇宙関連銘柄の登場も有力視されているが前途は多難だ。

 21年の株式新規公開銘柄の7割が公開価格を下回っている惨状を考えれば、公開価格について真剣に議論する必要がありそうだ。「本当に低すぎるのだろうか」(新興市場に詳しいアナリスト)。株式市場と対決姿勢を見せているとされる岸田政権の、公開価格に対する基本方針がどうなるのか含めて波乱含みだ。「公開価格を上げろなどと上から目線で決めたりしたら、新興市場にはペンペン草も生えないことになる」(前出アナリスト)。

 日本の株式市場でハイテク・バブルが崩壊すれば、次は信用バブルが破裂する。マザーズ市場には“上場ゴール”の銘柄が数多く存在する。「22年に上場企業の経営破綻が起こるとすれば、まずマザーズ上場銘柄から」と指摘する市場関係者は多い。

東証一部に上場したビーウィズも公開価格割れ

 3月2日、東証一部に新規公開されたビーウィズは公開価格(1400円)を5.7%下回る1320円で初値を形成した。パソナグループのコンタクトセンター子会社だ。想定価格1920円に対し、公開価格は仮条件(1400~1700円)の下限で決まった。それでも公開価格を下回ったわけで、新規上場に対して個人投資家の投資マインドが冷え切っていることがよく分かる。3月4日には一時、1225円まで下げ、上場来安値を更新した。

 3月11日に上場したセレコーポレーション(東証2部)は公開価格(1900円)を4.2%下回る1820円で初値を付けた。1都3県でアパートの設計・施工・運営管理を担う人気薄の業態だった。この日の高値は1871円で、公開価格を上回ることはなく、その後、一時1715円まで下げた。22年に新規上場したのは10社。公開価格を下回って発進したのは、これで4社となった。

 3月17日に東証2部に上場した守谷輸送機工業は公開価格810円に対して、1.2%上回る820円で初値を付け、公開価格割れをかろうじて回避した。同社は荷物用エレベーターメーカーのトップ。大手企業がこの分野から撤退するなか、生き残って株式公開に結び付けた。しかし、3月17日の高値は821円。安値は738円、終値は748円で公開価格を維持できなかった。

BusinessJournal編集部

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