
日本電産は4月21日、永守重信会長が最高経営責任者(CEO)に復帰した。関潤社長は1年足らずでCEOを外れ、最高執行責任者(COO)に“降格”となった。昨年6月にCEO職を譲り、経営全般のかじ取りを関社長に託してからわずか10カ月で永守氏が復帰することになった。
「世界の状況は逆風にあり、速い決断と対処が必要な段階に来ている。創業者ですべてを知り尽くしている私が短期的に指揮を振って、業績を改善する」
永守氏は4月21日のオンライン決算説明会でCEO交代の理由をこう説明した。株価の低迷が、CEOに復帰を決断する最大の理由だろう。東京株式市場で日本電産の21日終値は8970円。1年半ぶりの安値圏まで下落した。関氏にCEOを交代した21年6月時点では1万2000円台で、この間の株価の下落率は日経平均株価の下げより大きい。「今の株価は耐えられない水準。1万円くらいで残って入れば、私の出る幕はなかったが、ここまで下がるとなかなか厳しい」と永守氏は不満を口にした。
確かに、関社長は新型ウイルス禍で自動車需要が落ち込んだことや半導体不足、さらにはロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料費の高騰など、数々の逆風の中で経営のかじ取りに苦戦した。2022年3月期の連結決算は、売上高は前期比18.5%増の1兆9181億円、純利益は12.2%増の1368億円と過去最高を更新したものの、利益は市場コンセンサスを下回った。鋼材など部材が高騰したが、価格転嫁が遅れ、業績は思ったほど伸びなかった。
なかでも、永守会長が次世代の主力と期待する車載事業の業績が悪化した。同事業の営業利益は45.3%減の106億円に落ち込んだ。車載事業の不振が、今年に入ってから株価が1万円を割り込んだ原因の一つだ。関社長は、成長が見込まれる電気自動車(EV)向けモーター事業に専念する。
永守会長は「(関社長の)実力もわかった。3年ほど経ったら独り立ちして、CEOに戻ってもらえると期待している」と述べた。「投資家に安心してもらえるところでバトンを渡す。1年でCEOを渡すのは早すぎた」と語った。一方、「一番実績をあげた人物がCEOになる形をつくる」として、あくまで実力を重視するとの考えを強調した。関社長は「正直悔しいが、向かい風を跳ね返す力がなかったのは事実。会長との実力差を見た。日本電産に外部から入る難しさを感じた」と述べた。
同社は来年4月1日付で社名を「ニデック」に変更することも発表した。これまで英語標記として使ってきたニデック(Nidec)にブランドを統一し、グローバル企業としてのイメージを高めていく。