
先日、千葉県銚子市に所在する「犬吠埼観光ホテル」を訪れる機会があった。「楽天トラベル」など旅行サイトで顧客から高い評価を得ている宿泊施設である。確かに、海沿いという最高のロケーション、露天風呂、部屋、食事など、なんら申し分なかった。
しかし、筆者が何より驚いたのは、「お客様のために自分たちができることは、なんでも喜んでやらせていただきます!」という姿勢が、ソフト・ハード両面において滲み出ていたことである。
例えば、フリードリンクなど一般的なサービスはもちろんのこと、広いロビーはおびただしい数の雑誌、おもちゃ、無料貸し出しDVDソフトなどで溢れかえり、さらには無数のマッサージチェア(無料)まで用意されていた。これは1週間滞在しても飽きないだろうと感じた。
建物自体はかなり年季が入っているが、ロビーや部屋など、モダンな感じにリフォームされており、部屋は茶の間、寝室それぞれに大きなテレビが1台ずつ、マッサージチェア、斬新な清浄機、ヨギボーのようなソファなどが設置されていた。当然、接客に関しても、ここまで徹しているホテルのおもてなしが悪いわけがない。
斬新な取り組みはどこから来るのか?
お話しを伺うと、次期後継者の強い思いで、歴史あるホテルをソフト・ハード共にリニュアル中とのこと。ハードのリフォームは大きな投資が必要となるため、できることから少しずつ行っているらしい。
企業の再生や地域の活性化などで、「若い人の斬新な発想で!」といった言葉をよく耳にするが、そもそも若いからといって必ずしも斬新な発想が出てくるわけではない。学生と接していると、若者は素直で経験がない分、形式的で保守的な側面も強く、こうした姿勢を打ち崩すことが自らの役割かもしれないと感じることすらある。
また、仮に斬新な発想を持っている者がいるとしても、強く断行しようとする者は少ないはずだ。さらに、実際に斬新な発想を強く断行しようとする者がいても、これまでの慣習や伝統とは相反する場合が多く、受け入れる側、例えば先代経営者の度量や覚悟が求められる。
犬吠埼観光ホテルのロビーに筆者は感動したが、「ごちゃごちゃしていて嫌だ」「高級感が損なわれている」と感じる客もいるだろう。昔からの常連客の賛否も分かれるように思われる。
しかし、現代の成熟した社会においては似たような商品やサービスが溢れかえっており、しばしば差別化の重要性が指摘されるが、その第一歩は、やはり覚悟を持った斬新な取り組みということになるだろう。失敗すればやり直せばよいだけで、失敗から学べることに大きな意味・明日があるはずだ。