
楽天モバイルを取り巻く状況が、どうも騒がしい。
格安携帯事業のなかで、無料の料金設定などを強みとして一気にシェアを伸ばしてきた同社は、6月時点で契約数が約546万に上ることが明らかになった。目玉商品だった「0円プラン」が廃止となっても、契約者数は22万人減にとどまっている。これは後発の携帯事業としては十分に健闘している数字ともいえるが、ここ最近になって同社の問題がたて続けに噴出しているのだ。全国紙社会部記者が解説する。
「楽天モバイルはすでに、個人情報漏洩などで7度の行政指導が行われており、9月の通信障害の影響で8度目の行政指導も検討されています。これまで通信速度の遅さなどが主に注目されてきましたが、ここ数年で事件化されるような案件も目立ちます。
問題視されているのは、朝日新聞がスクープした、携帯電話基地局整備をめぐり取引先の日本ロジステックが不正水増しを行い、楽天モバイルの元担当者に還流していたという事件です。その損害額は46億円にも上るとみられており、企業イメージを大きく傷つけるだけでなく、極めて悪質な事件として調査が続いている。特に基地局整備は同グループの根幹に関わる事業で、莫大な予算をとって注力しています。楽天モバイル側は形式上、被害者ではありますが、依然として警視庁は楽天モバイルへの注視を続けています」
確かに同社を取り巻く事件は枚挙にいとまがない。2021年1月に、楽天モバイルの社員が前職のソフトバンクから秘密情報を不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反容疑で逮捕された事件も記憶に新しい。現在も係争中の同事件で検察は懲役2年、罰金100万円を求刑している。なお本件では、別途ソフトバンクが楽天モバイルに対して約1000億の損害賠償請求を求める裁判も継続中だ。
また、今月には基地局整備問題の余波が残るなか、同社社員が川崎市でバイクに火を付け、器物破損で逮捕されるという醜態も起こしている。そんな背景もあり、現在進行系で楽天グループを取材する記者も多い。
「捜査二課周りの報道陣は、『しばらく楽天からは目を離すな』と上から指令を受けている社が多いですよ。それだけ知能犯罪の事件でいうと、去年の秘密情報の持ち出し、今年の基地局整備に伴う不正水増し請求は企業名も含めて大きなヤマでしたから。秘密情報持ち出しは。すでに裁判で全容が明らかになりつつありますが、基地局整備についてはまだまだ奥行きがありそうです。仮に担当者の個人レベルの話であっても、組織がその実態をまったく把握していないとは考えづらいため、引き続き注視する方針です」(同)